グリーンランドのスミ、 2010年のライブ

 かっこいいーーーーー こんなの見つけちゃった!


しかし二人のシンガーソングライターに牽引されているグループって、どうして、その二人の「決裂」で終わってしまうんだろう。音楽的には最高のパートナーだった二人。(グレン・ティブルブルックとクリス・ディフォード、ジョン・レノンとポール・マッカートニー、谷村新司と堀内孝雄? などなど)

政治や社会に興味がありメッセージを届けいたいと思っていたマリク(作詞担当)と、あまり興味はないんだけど、とにかく一緒に音楽を演奏するのが楽しかったというペール(おもに作曲担当)。いろいろ考えちゃうよね。

上に貼ったライブ動画は再結成ツアーの時のものだが、演奏をする二人は最高に楽しそうだ。でもこのツアーのあと、二人は口を聞いていないのだそう。おそらく再結成はもうないだろうな。

スミが解散してグリーンランドに戻り、そこで彼らがそれぞれついた職業が、映画のエンディング近くで紹介されるのだが、これまた人生の悲哀を語る。どんな気持ちでそれぞれの職業についたのだろう。いろいろ思っただろうな。いろいろ…   

その辺が映画『シュガーマン』にも通じていて、ちょっとそれを考えると鼻の奥がツンとくる。あの映画は… 絶賛している人が多いけど、わたしは本当にいろいろ考えたんだ。彼は音楽で世界が変えられると信じていたのだ。でもそうはならなかった。音楽は勝手にアフリカの先でヒットし、彼は何年か後に大スターとして招聘された。そこに虚しさがある。彼が一番聞いて欲しかったメッセージ、届けたかったメッセージは届けたい相手には届いておらず、結局は個人ってのはこんなに無力だと思い知る羽目になるわけだ。

あの映画には不思議な気持ちにさせられる。あれを見て「すごい音楽! ディランよりすげぇ!」とか「ぜひ新作を!」とかいう人は映画のことを全然わかってないと思う。あれは、人間はこんなにも無力だということ、それをまざまざと見せつけてくれている映画なのだ。例え音楽が万が一ヒットしてもそれはそれで自分のコントロールを失う。「音楽は常にミュージシャンよりも大きい」そう思ってでもいなければ、まったくもって馬鹿らしくてやってられない。そういう無力感をひしひしと感じさせてしまう映画なんだ。

『サウンド・オブ・レボリューション〜グリーンランドの夜明け』も同じことを伝えていると思う。結局マリクもスミのメンバーも「負けた」「音楽で社会は変えられなかった」と思って故郷に帰っていったと想像する。が、彼の勝利は、彼がまったく意識しない形で、人々の中に残ったのだ。そして、それが、本当に素晴らしいと思う。音楽は素晴らしい。が、同時に個人の無力感は今、戦っているわたしたちにも厳しくも迫ってくる。

まだ映画を見ていない人に、ネタばれしないように書いたので、わかりにくいかも、だけど、あの映画を見た人ならわかってくれると思う。グリーンランドでは、まだ住んでいる人たちの90%がグリーンランド語を話せる。これは世界の秘境地域、限界言語においては、異例なことだ。そしてそれはスミがもたらした勝利だとも言える。犬ぞりや、アザラシ猟や、シロクマは時間との戦いで滅んでしまうのかもしれない。が、言葉は残る。言葉こそが文化なのだ。

本当にいい映画です。絶対に見てね!

映画『サウンド・オブ・レボリューション〜グリーンランドの夜明け』はピーター・バラカンさんの音楽映画祭で上映されることが決まりました。詳細はこちらをちぇきら
7/14(水) 18:10からの回では、上映後にピーターさんと野崎のトークもあります。楽しみ。