すごーーーーく面白かった。パワフルな映画でした。
オーストラリア映画上映会第2弾ということで、昨晩はオーストラリア大使館さんにお邪魔しました。なお、この上映はオンラインで無料配信もされたようですが、私は本当に久しぶりのリアルイベントで、かつ久々に友人や音楽仲間にも会えて、とても充実した楽しい一夜となりました。主催はオーストラリア大使館さん。ゲストはオーストラリア放送協会の先住民族映像専門家のターシャ・ジェームズさん、そしてミュージシャンでもありご自身映画も撮られている石井竜也さん。
この作品はロルフ・ドゥ・ヒーアとピーター・ジギルが監督、ドゥ・ヒーア監督が製作、脚本もつとめ、カンヌの2006年「ある視点」部門で審査委員特別賞を受賞した作品です。ドゥ・ヒーア監督はオランダ生まれオーストラリア育ちの映画監督。それにしても新しいのは、このテの先住民族を描いた作品って、ドキュメンタリーだったり、現代社会の映画にちょこっと出てくる先住民族みたいな描かれ方が多いと思うのだけど、こんな風に彼らの視点で彼らの語りで(しかも彼らの言語で)描かれた作品って他にはないと思う。90分ほどの作品でしたが、アボリジニの文化のいろんなことがわかったような気がしました、
この映画の中には3つの異なる時間軸が流れています。1つはナレーターとそれを見ている私たち(現代)。そして彼の祖先である青年がお兄さんとともにカヌー作りをしつつ(これが2つ目の時間軸。モノクロで描かれます)、そして遠い祖先の物語(これが3つ目)。
アボリジニについては私はほとんど知識がありませんが、彼らのすべてが自分もある程度走っているイヌイットのことを想起させ、人間って深いところでは一緒なんだなぁとしみじみ考えました。彼らのプリミティブな生き方は現在の私たちにいろんなことを問いかけてきます。
いや「原始的ではなく、これこそが先鋭だ」というお話があったのはゲストの石井竜也さん。全然知りませんでしたが、石井さんってアボリジニのカルチャーにとても詳しいんですね。その石井さんが紹介していたのが、エミリー・ウングワレー(Emily Kame Kngwarreye)というおばあちゃんのアーティスト。彼女のことを全然知らなかった私は、帰宅してさっそくググってみたけど、すごい! みなさんも是非この名前でググってみてください。どれも圧巻のすごい作品ばかりで迫力があります。確かに石井さんが説明していたとおり、特に後期の作品はすべてがターナーの油彩みたいに光の中に溶けこんでる! うーん、すごいなぁ。2008年に日本にも来ているんですが、作品どれも巨大なものばかり。これは見たかった。
話を映画に戻すと、そんな風に3つの時間の流れを追いながら、物語は進み、特に主人公が亡くなる時の描写がものすごく、なんだか瞬きもできませんでした。亡くなる直前、最後の力をふりしぼって踊る死にゆく者のダンス。そしてついに倒れた死にゆく者の魂を引き継ぐように力強く踊る若者たち。死にゆく者は倒れても指や足で「まだ聞いているよ」と残った人たちに合図を送る。そんな身体にボディ・ペイントを施し、お祓いのような儀式をする人々。あのシーンは本当に忘れられません。
こちらが映画のトレイラーです。
ちなみにこの映画で語り手をつとめていた方は、個性際立つアボリジニを代表する俳優デヴィッド・ガルビリル。彼はのちに、同じ監督のこの作品「CHARLIES'S COUNTY」の主演もつとめています。この映画もおもしろそう。どっかで見れないか探しているところです。
監督の興味深いインタビューはこちら。
監督の説明にもあるように、先住民族の人たちの「2つのカルチャー」の狭間での葛藤や、本当に自殺やアルコール中毒が多いという話など、思い出すのはグリーンランドのことばかり。あれもデンマーク大使館が主催のイベントだったよなぁ。(デンマーク大使館でのパーティのことは最近このブログにも書きました。こちらへどうぞ)
こういうイベントを上から目線とか、植民地主義とかいろいろいう人がいるのかもしれませんが、じゃあ日本の文化庁が沖縄やアイヌの文化について何をしているのか、と問われれば何もいうことはできません。実際、私もこれがなかったらアボリジニの文化を知る機会がなかった。いや、こういうのって、本当に大切な機会でしょう。
ちなみに先住民族って、オーストラリアの人口2,500万人のうち3%。100万人もいなんですよと説明され、えっ、そんなにいるの?!と思ってしまった、わたくす(笑)。グリーンランドなんて5万ですから! 5万人! いや、56,000人か!
というわけで、グリーンランド映画の上映ももうすぐですよ。こちらをチェキら。7月14日には上映後にピーターさんと私のトークもあります。ぜひご来場ください。
そして…同じ映画祭でもかかるこちらの映画『大海原のソングライン』も楽しみになってきた!! 私はまだ見てないんだよね。