映画『ジョン・レノン 失われた週末』を観ました。

 


知っている人は知っているし、このブログにも何度も書いたことがあるから、繰り返しになるけれど、私はむかし相当なビートルズ・オタクだった。

でも自分が音楽の仕事をするようになり、音楽ビジネスの嫌な部分を知るにつけ「ヨーコが演出する愛と平和のジョン・レノン」「ビジネスに妙に賢い株式会社ビートルズ」に嫌気がさし、ファンを辞めたのだった。

今でもビートルズはなるべく聞かないようにしている。聞いたり観たりすれば、また逆戻り。ビートルズのファンにまた戻ってしまうからだ。ビートルズのファンはお金がかかる(笑)。これを始めると、少なくとも本はもう自由に買えなくなる。だから聞かない。

寂しいことかもしれないけど、所詮はその程度の愛情だったということだよね。私にとっては自分を頼ってくれるアーティストがビートルズの100倍も大事なのだ。

人ンチのアーティストには興味がわかないんだよね。これ面白い現象で、以前安室ちゃんのライヴの仕事をしている人も同じことを言ってた。所詮私たちは音楽ファンではないのだなと自分では思っている。

そんなわけでこの映画もどうしようか迷っていたのだけど、一応見ておくかと思い(いちいち斜めな視線w)、見に行った。

なんだかんだ言って、あのファンクラブのおばちゃんの映画も見てるし、私は結構映画には行っている。ビートルズは卒業しました、と言いつつ(笑)

しかしこの大量の映像の(ほとんどは自身がとった写真とはいえ)シンクロ料やら何やら考えるとめまいがする。よくクリアになったよなぁ。それも彼女の成せる技か? そう言う意味ではめちゃくちゃ贅沢なドキュメンタリーだ。

この映画を見る前の私のメイ・パンの知識といったら、ジョンのLOST WEEKENDのパートナーだったこと、そしてジョンとヨーコはエルトンのコンサートで再会し、二人の仲が復活したということ。その程度。

あとジョン・レノンのドキュメンタリーにソバージュヘアの彼女が登場し「ロスト・ウィークエンドって言うけど、そんなにロストだったわけじゃない」と証言しているということ(この部分の映像は今回のこの映画でも使われていた)。その程度だ。

というわけで、ここからは私のこの件に対する考察(笑)。

ヨーコは明らかにジョンをマニュピュレイトしていた。ジョンはそのくらいピュアな人(別の言葉ではバカとも言う)ではあった。

だから彼はヨーコといる時はヨーコのことを、メイといる時はメイのことを自分は心から愛していると自分で思っていたに違いないし、その感覚はよくわかる。不倫する男の人の言い訳だ。

でも、そこに彼の嘘はない。こういう時は、だから、より長い時間を共有したほうが勝利になるのは、当然のこと。

そしてヨーコは相手をコントロールし、囲ってしまうタイプの女だということ。マネージャーやパートナーによくあることだが、ダメなマネやパートナーは相手を囲って、隔離してしまう。自分の存在意義をそんなことで実現しようとするマネやパートナーは、残念なことにかなりたくさんいる。

本当はその人が社会とうまくやっていけるようにサポートするのが彼ら・彼女らの仕事なのだと思うのだけど、そういうタイプの人は、意外と少ない。というのもコントロールする方が楽だからだ。そしてアーティスト本人もそれが楽だと思っている。(だから芸能界、事務所とアーティスト、マネとアーティストの問題が絶えない)

自身もアーティストであり表現者であるヨーコはジョンに浮気されて(この映画の中で明かされる実際に起こった時件はかなりショッキングである)とてもじゃないけど自分のプライドが許さなかったのだろう。

そのくせ、ジョンのことは好きだったから、完全に手放すことをせず(本当に相手のことを愛しているなら自由にさせてあげるのが本当の愛だと思うのだが)、自分のコントロール下におけると踏んだメイ・パンをあてがった。

ジョンは誰かがいないとダメなタイプの男だったから。(ミュージシャンやアーティストにそういうタイプの人は多い)

ただジョンはヨーコに囲われて幸せだった。であれば、誰が何を批判する権利があるのだろう。ジョンは本来社会の愛と平和ではなく、「自分の」愛と平和を追求する人で、ショーンが生まれ、主夫になって幸せだったのだと思う。

一方メイはいわゆる「普通の感覚を持った普通にいい人」。自分に対する欲もなくジョンに尽くした。シンシアや、特にジュリアンのことだって、普通のしっかりした人なら、ジョンにちゃんと一緒の時間を一緒に過ごすよう促すよね。当然だと思う。私だったらそうする。

だからジョンはジュリアンとの関係を修復できた。そしてメイ・パンと一緒にいた時期に、自分の音楽人生の中でもっともプロダクティブな時期を過ごした。おそらくメイがずっとジョンと一緒にいたら、ビートルズは再結成していたかもしれないと思えるほどだ。

もしかしたら、世紀のすごい名曲が、もっとたくさん生まれていたかもしれない。

でもヨーコと一緒にいることで、ジョンはジョンで『ダブル・ファンタジー』というすごいアルバムを作った。あのアルバムはやっぱりヨーコがいなければ生まれなかった。

「音楽ファン」の私としては、おそらくビートルズの再結成よりも、あのアルバムの方が好きかもしれない。だから歴史はこれでいい、と思う(と、なんか偉そうな私w)。そしてこのアルバムのヨーコのトラックを飛ばしてジョンの曲を聴くのであった(ダメダメなファンw)。

間違っているかな? 他のことを考えた方がいたら、ぜひお便りください(爆)。

そんなわけで事実は実際には単純ではなく、ハートブレイキングでもある。最後の歯医者のエピソードには、ひたすら切ない。悲しすぎる。

しかもこのことは、彼女の人生の最初期に起こった。彼女はまだめちゃくちゃ若かった。その後の彼女はトニー・ヴィスコンティと結婚し、子供をもうけ、離婚し、今はジュエリーデザイナーとして働いているのだそうだ。

若い頃の数年の出来事とはいえ、彼女の人生にこのことはずっと強い影を残しているのも、つらい。でもわかる。若いころの恋愛で大きく傷つくと、つらいわな…。

さてこの映画のパンフレットには、大好きな藤本国彦さんが間違いなく寄稿されているだろうと思い、パンフをしっかり購入。(角川シネマはパンフを買う時に現金しか使えないから要注意)買ったら湯川れい子さんとの対談も掲載されていて、狂喜乱舞。

メイ・パンは、今回のこの映画にともない日本の音楽雑誌の取材も結構受けているようだから、この映画、なかなか盛り上がっているのかもしれない。が、しかし日曜の夜帯の上映には、20人くらいしかお客がいなかった。1,300円という割引で見られる時間帯なのに。

こういう映画ができるとは、ヨーコの力が弱まってきているのかと考えなくもない。私の大好きなCar Poolカラオケでも、マカが出た回でも、数字はアデルの方が圧倒的に上だ。そうやって今、音楽業界は神話ではなく、数字で人気がリアルに見えてしまう時代ではある。

とはいえ、作品の話に戻ると、彼女のためにも、この映画ができてよかったと思う。最後のメッセージにもある通り、彼女がこれを告白する場がなかったら、ちょっと可哀想すぎた気もするから。

とはいえ(再び)前にも書いたけど、ビートルズ周りって女は「私がこうした、私があぁした」と赤裸々告白が多いのに、男性周りはプライベートなことをあまり話さないでドライなところが顕著なのである。

そこが男はかっこいいとされる部分なのか、音楽業界=男性社会ということなのかわからないけれど、とにかくそういうもんだ、ということ。

そしてやっぱり一番ビートルズ周りの女性たちで一番かっこいいのはジェーン・アッシャーだよなということ。彼女は何も語らないし、ビートルズ以外の自分のキャリアをちゃんと構築している。それに抜群にルックスが可愛い。これについては、ここに書いたので、よかったら読んでみてください。

とまぁ、なんだかんだで私はまだビートルズファンなのかもしれない。


ジュリアンがいい味出してたよね。

懐かしいなー このアルバム大好きだった。



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