豊田耕三、FLOOKを語る 後半


先日高円寺:本の長屋で行われたKOZO TOYOTA FLAT QUARTETの公演。楽しかった。

今回のこのイベントは提供:THE MUSIC PLANTということで(笑)FLOOKの来日直前の宣伝の意味もあったのですが、ご来場くださった皆さん、演奏してくださったFLAT QUARTETの皆さんには感謝、感謝です。

当日のステージから、豊田さんのFLOOKに関するMCを書き起こさせていただきました。どうぞ読んでください。そして、多くの皆さんがFLOOKの公演に興味を持ってくれますように。

豊田さんの視点、いいよなぁ。やっぱり演奏する人が言うことは説得力が違います。

(前半から続く)

さっきフルックは4枚のアルバムを出している。そして5枚目を出したっていうふうに申し上げたんですが、実はもう一枚、その前に1枚、ライブアルバムを出してます。 

まだマイケルが在籍していた時のライブの録音で、僕がアイリッシュを始めた当初は、全然そのCDが手に入らなくて大変だったんですが、今は普通にAppleミュージックとかで売られてしまって、なんかあの時の宝物を手に入れた感覚はもうないんだなみたいな、と。

でも、そのライブ盤、僕はめちゃくちゃ好きで。 とにかく三本のフルートが遊びすぎて、最後は破綻までしているっていう…全部それが入っています。

即興的に違うことをやるんですけども、やり過ぎでしょうっていう(笑)もうぐちゃぐちゃって、音がぶつかってるところとか平気であって、最高に面白いので、もしよろしかったら聴いてみてください。 


フルックのツアーは22日から始まって、23、24が渋谷。26が豊洲。その後も横浜、名古屋、京都とあります。首都圏で何度かありますが、初日の曼荼羅が売り切れました。

それ以外は聞くチャンスがまだまだあります。

そして箱(会場)によって雰囲気は相当違うんじゃないかなと思いますし、30年やってるバンドなんで、おそらくライブによってセットリストを変えていきたいとか平気でするんじゃないかなと思います。 


 僕は26日の土曜日、豊洲のシビック・センターのホールで、「ケルト市」っていうのにゲスト参加させていただくことになっています。 




で、その中でですね…今から申し上げることは、ネット上にバンバン書かないでくださいね…。今、あのフェイスブックとか翻訳機能で、もれなく本人達にバレてしまうので…。 30周年記念のお祝いということで。サプライズでその最後の曲のところに皆さんにも参加してもらおうという企画があります。 

 僕は先にステージ乗ってるんですけれど、本人達に内緒で有志の方が…彼らは、今きっと必死に練習してるんじゃないかと思うんですけど…一緒にステージで演奏してしまうっていう…。

それは主催者の野崎さんが一年ぐらい前に発案されて、アイディアは面白いけど、具体的にはどうしたらいいか、どういう曲が良いかっていうのを一緒に悩んでました。 

そもそもまず普通に一般のご参加くださる愛好家の皆様が弾けそうな曲がなさすぎて、とにかく途方にくれるっていうところから始まり、さらにですね、これなら行けそうっていう曲がですね、キーが特殊なんですよね。 さっきのE flat問題じゃないんですけれど。

フルックのブライアン・フィネガンというメインのホイッスルとフルートの方は、今でこそ、そうでもないですけど、昔は、ジェラルミンのケースにいろんなキーのホイッスルやフルートいっぱい入れてて、もう軍人みたいな感じだったんです。 

そして、そのケースをガチャって開けると楽器ががーっと入っている。それをカッコいいとか思ってた時期が、僕にもありました。 とにかく曲によってバンバンとキーを変えていくので、すごいんです。

普通のアイリッシュのトラックを演奏するD管で吹いている曲なんて、ほとんどなくて。 しかも弾けそうな曲とかキーの曲とかを選ぶと、フルックの中でもどうもマニアックになりすぎる。 

そして、それを野崎さんがフルックに「アンコールこれにしない?」みたいことを提案すると、それがあまりにも不自然になりすぎて、このサプライズがばれるんじゃないかっていう懸念が出てきて…。 

 結局、どうしたらスムーズに事が進むかということを考えたら、一昨年の来日公演の時に、アンコールで僕が出たんですが、今回も豊田が来るからこの曲をやろうってのが一番スムーズに物事が流れるのではないかという結論になったわけです。 

あのゲスト参加させていただいた時にやった曲をそのままもう1回やる、という。

セーラはこの曲のためにアコーディオンを持ってくるのが面倒で「豊田なら、なんでも吹けるわよ、だから別の曲やろう」と言ったそうですが、それを「あの曲のファンは多いから」と野崎さんが押し切った。

つまりカモフラージュで何とか乗り切るという作戦になっています。 


ですが! それでも。この課題曲は比較的大変な曲なんです。二曲が続けて演奏されるリールなんですけど、一曲目は「Branohm」っていう曲で、それはまだ有志の方がまだステージに乗らない段階で。 

 モイア・ブレナックさんっていうリバーダンスの初代フィドラーの人が作った曲です。 そして続くのが「Trip to Herve’s」。こちらに有志の皆さんに入ってもらいます。 

 これはマイケル・マクコールドリックさんが作った曲で、この二曲のセットはフルックのライブ盤にも収録されているし、それからマイケルさんのソロ・アルバムや、別の組み合わせにも収録されていたりしていて、人気曲であることは確かです。 

その曲をちょこっとだけ、今日はちょっとギターと2人だけでやってみたいと思います。 っていうのはこの曲のキー。これをボタン・アコーディオンでやるのは鬼畜すぎるっていう感じなんですね。

で、実際フルックのセーラさんも、この曲の時はピアノ・アコーディオンに楽器を持ち替えて、コードをがーっと弾いてたりするので。さすがにフルートは吹いてないんです。 

 先ほど話したシャロンとマイクのカルテットの演奏に寄せた形で演奏したいと思います。 


笛演奏家の目線から今日はたくさんお話ししましたけど、フルックのメンバーにはさらにすごい人がいます。

誰か聞いても、この楽器のナンバーワンはこの人っていう人がいるんですが、それがバウロンのジョン・ジョー・ケリー。 いわゆる世界ランキング1位みたいな人なんですけど、ものすごい超絶技巧だけど、それを自分のソロの時以外では、全然ひけらかさないんですよ。

非常にシンプルなパターンでやってきて、そのシンプルなパターンが実は鬼のように難しかったりするんですけど、平然とやってます。 

 そしてそのソロになるとですね、彼を一人残して、他のメンバー3人はどっかに居なくなったりとかして(笑)、彼一人で5分ぐらい平気で太鼓だけでやるっていうコーナーが毎回ライブでは必ずあります。

もうそれだけでも観る価値があります。何せ世界中のバウロン奏者に影響を与えた人なので、それを観るのも非常に面白いと思います。 


そしてギターのエド・ボイドという方はですね、今もうめちゃくちゃ売れっ子でルナサという野崎さんが手がけられているもう一つのトップ・バンド、ルナサのギタリストも兼任してるっていう。こういうケースはめちゃくちゃ珍しいですよね。こんなスーパーバンドを二つかけもちしてます、っていうのは。 

(こちらの映像は2023年12月日本でのルナサ。エドがギターを担当しています)


彼の演奏は、僕の中では、足し算、引き算がめちゃくちゃ上手いというところが魅力ですね。アイリッシュ・ミュージックって基本的にはあんまり音量をこうチェンジできないんですよね。ダイナミクスが付けられなくて。 

 で、さっきやったみたいに途中で演奏を引っ込めるか、また再び登場するとかぐらいしか、ダイナミックつけるために出来ることがなかったりするんですけど、エドの場合、そこにかなり大胆にギターが入ったり入らなかったりとか、静かに繊細に指で弾いたり、後半盛り上げたりとか。

そういうダイナミクスを作ってるのがエド・ボイドという人かなと思っています。引き出しがとても多いギタリストです。 この4人の組み合わせを、ぜひご覧頂ければと思います。


というわけで、確かに豊田さんの言うとおり、フルックのダイナミクスはこの人のおかげかも? この曲とかもエドのギターが冴えますね!


 

フルックの来日公演はもうすぐ。7回目の来日ツアー。

FLOOK 2025 
22 April(火)南青山曼荼羅 SOLD OUT 
23 April(水) Shibuya www(こちらはスタンディング+多少椅子あり) 
24 April (木)Shibuya www(こちらは全員着席公演) 
26 April(土)春のケルト市(豊洲) 
27 April(日) 横浜 Thumbs Up 
28 April (月)名古屋 Tokuzo 
30 April (水)京都 磔磔 
詳細はこちら http://www.mplant.com/flook 


 
そして、KOZO TOYOTA FLAT QUARTET。お披露目ライブももうすぐ。こちらが正式なバンド結成の初ライブとなるのでしょうか。そして半音上げて演奏しているのに、なぜフラット・カルテットなのか? その秘密とは?

それは通常Dの音程をEbつまり半音あげて、Ebで演奏しているから、フラット・カルテットなんだって。なるほど。それにしても…なんつーこだわり。

私はこんなの全然知りませんでした。伝統音楽のこと、まだ全然わかってないよなぁ! それでこの仕事してんだから笑えるんだけど。

こちらのライブにもぜひ駆けつけてください。もしかしたら伝統音楽は、彼らみたいにこの位置に戻っていくのではないだろうか? 

ボシーからこっち、いわゆるあぁいうスタイルが(たまたま)一般的になっていたアイルランド音楽だけど、本来のこっちの方向へ戻ったように見えて、実は進化していくのかもしれない。

…深いなぁ。