音楽って、弱い人たちのものじゃなかったの?
伝統音楽とか、まさにそうだよね。みんなで大変な労働をしなくてはいけない時、人が亡くなった時、戦争に行く息子を送り出す時、恋人と一生会えないかもしれないと思いながら海を渡る時。そういう時に音楽はあった。
なんだか新しい音楽賞が出来たらしく、音楽業界人の多い私のTwitterのタイムラインはそのニュースで埋もれていった。オープニングはYMOのトリビュートみたいな曲で、確かにかっこいいなとは思った。お金かけてちゃんと作られているのが素人の私の目にもわかる。
とはいえ、まったく知らないアーティストばっかりで、いやー そうっかー 日本の音楽業界って、今、こんなことになってんのね、と正直ちょっと引いたのも事実。だいたいピアノの角野さん以外、誰が誰なのかもまったくわからない。
普段、こういう音楽聴いてないから(笑)しょうがないよね。コロンブスで話題になってたあのバンドも復活してたくさん賞を取ったみたい。なんかあの辺の経緯もよくわからない。あの時は、レコード会社もスポンサーもすべてをバンドのせいにして、ひどいもんだなと呆れたのだけど。
それにしても、こう自分が好きな音楽とはまるで違うな、と。でも、それは好みの問題だから仕方がないんだけど。
こういうのが、今のメインストリームなのねと、その違和感がなんなのかわからないと思っていたら、松尾さんがそれを言語化してくれた。(ポリタスTVより。無料期間終わっちゃったから会員にならないと見れないかもだけど)
なんていうか、あの力でグイグイ押してくるこの感じは、なんか自分の目指すものと違うんだよな。
メロディ好きな自分だからというのはあっても、ラップは否定しない。ラップやパンクで強いメッセージを届けている人たちもいる。
しかもウォリス・バードも言っていたとおり、人間を興奮させるのはメロディではなくリズムだ。そのリズムでグイグイ押してこられると、なんだか自分はついていけない。そういやアフリカの音楽とか、あんまり得意でないのは、その辺が理由なのかもしれない。
売れない音楽やってる僻みかもしれないな、とも思った。負け犬の遠吠え、手の届かないすっぱい葡萄(笑)
それにしても、ここで松尾さんの指摘にもあるとおり、こういうアワードは、今までの不祥事、セクハラ、パワハラが横行する芸能界が「これからちゃんとやり直します」と日本中にメッセージを送る絶好のタイミングだったはずだったのに、それもなかった。
それは、いったいどういうことなんだろう。確かに昔から言われているレコ大とかのダメっぷりを、今回振り切ったのは評価できると思う。でもなんか中途半端なんだよな。
海外の人たちは…(とか言っちゃうのもなんだけど)みんなグラミー賞だって、アカデミー賞だってなんだって、こういう場所は、そういう社会に対するメッセージを伝える場なんだろうにと思う。
弱い人に寄り添えなくて何が音楽なんだろう。社会的メッセージがなくて、何が表現活動なんだろう。
そういうのは、これから出てくるんだろうか。
日向敏文さんの新作のプロモーションのためのプレス資料を作っていて、日向さんの音楽を言葉で表現するにあたりかなり苦労したけれど「弱者の立場に徹底的に寄り添う」って言葉は、自然に出てきた。
そうか、私が音楽の仕事をしてるのは、そういうことなんだ、と。日向さんの音楽を通じて、自分で自分のことをやっと発見したような気がする。
でも仕方がない。人にいろんなことを強要することはできない。私たちが求めているのは、心からの共感なのだから。そして、私はその、あっち側ではなく、こっち側の音楽に、自分は関わっていくのだからと改めて思った。
THE MUSIC PLANTとしての次の公演は、こちら。
そして、その日向さんのひさしぶりのパブリック・イベント。6月26日 代官山「晴れたら空に豆まいて」にて。詳細はこちら。ニューアルバムの視聴会&公開インタビューと言った感じ。出演:日向敏文、松山晋也、オノセイゲン
2年前にレコーディングした無印良品BGM29 スコットランド編がやっと公開になりました。良かったら、聞いてください。プロデュースはLAUのエイダン・オルークにやってもらいました。