いやーーー すごい映画でした。今年のベスト1かも?? 今年見た映画のあれこれを自分のブログを見ながら思い返してみたけど、やっぱりこれが一番すごい映画だったと思う。
『遠い山なみ〜』も相当好きだったけど…いや、こっちの方がパワフルではある。いいや、比べられるものでもないか。でもとにかく私が言いたいのは、ものすごく良い映画だったということだ。
このパンフレットの写真がいい。映画のことをよく表している。
そう、このパンフにサインがあることでわかるように、実は上映のあと、監督と女優さん3人が登場しトークが15分ほどあった。そしてパンフ買った人にサインをしてくれることになり、私も思わずサインの列に並んだ。別にサイン会なくても、普段からパンフはよく買う方だけどね。
感想をお伝えしたくて、良い映画だった、とても感動したことに加えて「これ、いいスティル写真ですね、映画のことをよく表している。裏表紙のお茶碗の写真も」とお伝えできた。
なんか、それでちょっと心がホッとした。いや、映画を見て暗くなったのではない。この映画の最後には、なんとなくだけど確かな希望があるのだから。
普段、私はあまり日本の映画を見ない。理由はいろいろあるけど、それはここには書かない。だから吉田浩太監督の作品、初めて見たかも。いわゆる是枝裕和さんや先日の佐向大さんみたいに「世界観」がある監督だ。いや、すごかった。本当に素晴らしかった。
見る予定なかったのに、見たのは夏葉社の島田さんのこちらのツイートから。
映画『スノードロップ』めちゃくちゃよかったなあ。生活保護という重たいテーマを真正面から描く。暗い映画ですが、はっきりと見える光がある。主演の西原亜希さんもとてもよかった。思わず、ポスターを買ってしまった。https://t.co/5kGj4C0TnO
— 夏葉社 (@natsuhasha) November 3, 2025
夏葉社、いい出版社だよね。世界で一番いい出版社だと思う。その島田さんの推薦であれば、というわけでさっそく見に行った。新宿武蔵野館。
とにかく淡々と始まる。あまりに淡々としているので、最初はなんか「謎…」と思いつつ見ている。が、これがすごくある意味効果的で、私は映画を見ていることをすっかり忘れてしまい、まるでこの映画の中心にいる家族のご近所さんにでもなった気分になった。
同時に、なんか謎の家族ではある。主人公は感情を表に出すこともなく、ひたすら抑えた感じ。お父さんはお父さんで、ほとんどしゃべらない。でも、うちの父親もあんな感じだし、高齢者の男性なんて、あんなもんだろ、とも思う。
悪い人は登場しない。みんな真っ当な人でもあり、ボケてしまったお母さんの騒音にも目をつむってくれるお隣さんなども含め、周りは親切で、心ある人は多い。が、心ある人が多いから…かなのか?
そして、いよいよお父さんの怪我で生活が行き詰まり、生活保護を受けることになる。しっかりとした真面目な主人公。書類もきっちり用意し、本来は提出しなくてもいい住民票をしっかり準備したりする。
お部屋も質素だけど丁寧に暮らしが営まれているのがわかる。カボチャを丁寧に煮る、あのシーン、なんかよかったな。お父さんもよろめきながらも自分でお茶碗を片付けたり、みんなきちんと生きている。
私は… 生活保護というと…自分ももらう可能性がゼロではないだろうなとは思ってはいる。気ままな一人者として生きてきた。なんとなく大丈夫だと思ってはいるけれど、でも何かでつまずいたら、ありうるだろうなと想像する。
でも生活につまずいたら生活保護受ければいいじゃん、ちゃっちゃと書類書いてさ… 等々。そんなふうに考えてすらいた。
でもそれはイコール「生活保護受ければいいじゃん」と他人にも強要することにもなりかねないのだ…
だから、突然の食卓での父親からの提案には本当にびっくりした。そこからは、映画の空気ががらっと変わった。なんだか雷が落ちたようだ。まるでサスペンスのような空気だ。もう瞬きもできない。映画を見ているこっちはとにかく見守るしかできない。そして…
いや… でもどうなんだろう。
私が一番映画の中で同情したのは、実は私はあのケアマネージャーの女性だった。お役所仕事と揶揄されたり理不尽なクレームを受けつつも、とにかく誠実に、しっかりと役目を務め「いろんな人がいるけど葉波さんは大丈夫。私もしっかり仕事をしようと思います」と上司に熱く語る。
あの感じ。あの感じは私にもわかる。私は私の仕事をちゃんとしよう、と。よかった、この人は真面目なしっかりした人だ、きっとこの家族は大丈夫…と安心する。その感じわかる。
が、しかし…が、しかしなのだ。
最後の某所での主人公とケアマネ、二人の対面シーンはすごかった。言ってみれば「女優対決!」って感じか。「紙の月」の宮沢りえと小林聡美みたいな? あれもすごかったけど。是枝監督の万引き家族の告白シーンにも匹敵するかも?
いや、そんなことはいいとして…
いろいろ思うが、でも、主人公はケアマネに最後に心を吐露できた。それは大きいのではないか、と思う。そして、それを引っ張り出したのは、ああやって誠実に彼女に寄り添ったケアマネの存在のおかげに違いないのだから。そこを彼女にはわかってほしい。あ、違う、実在の人じゃなかった(笑)
いや、それはともかく、そこに私は救いがあるような気がした。彼女は心を言葉にできた。そして、それを聞いてくれる人がいた。いや、逆だ。一人だけど、彼女の気持ちを聞いてくれる人がいた。だから彼女は心を言葉にできた。それだけのことなんだけど。
そして私も主人公のことが少し理解できたような気がした。そして、それはひとつの、彼女の社会と関わるための前進…いや前進と言う言葉で言っていいんだろうかとは思うけど…前進なのかもしれないとも思った。っていうか、そう信じたい。そう信じたいよ。
いや、そんなことを言っている時点で、自分なら大丈夫。生活保護を申請することも、ちゃっちゃとやって残りの人生も楽しく送れるよ、と自分が思っているからなのか?
いや、大丈夫なのか、自分? っていうか、なに私、自分のこと心配してんだろ。そういうとこよ、あんた、そういう結局自分のことしか考えてないでしょ、と自分で自分にイライラする。
そしてやっぱり人間は役にたつことって、大事なんだなぁ、とも思った。いや、そう言う単純なことではなくて…
とにかくあれこれ思うことが止まらない。すごい作品だった。
そして最後の最後は、希望がなんとなく見えたように思えた。監督によるとケアマネージャーと、最後のハナさんのあの役は、一つの流れとしてつながっているのだそうだ。なるほど。そう思うと、確かになんとなくだけど、希望が持てる。って言うか、希望がますます信じられる。
エンディングの浜田真理子さんの歌声が、本当に沁みた。
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