音楽ビジネスは基本引退したつもりの私ですが、こちらの本はぜひ音楽ビジネスで働く人々、音楽ビジネスを目指す人々に読んでもらいたく、ご紹介します。
著者の鈴木貴歩さんは、私も大使館などで行われる北欧音楽関係の集まりやパーティでよくお会いする方。なんか、そういうのも面白いよね。
メジャーレーベルとか、そういうメインストリームの場所に勤務とかしてれば、横でつながられるような会もあるのかもしれないが、基本一匹狼の私は、北欧とか外国の団体に集められないと同じ国の同業関係に新たに合わない(笑)
いや、そうでもないか。人から人を紹介されることも多いしな…
それはともかく、とにかく鈴木さんはそういう現場でよくお会いする感じの良い方の一人。そしていつも海外のカンファレンスに登壇されてて、英語も流暢で、すごい活躍されているなぁと思っていたわけで、この本もご本人がfbで紹介されていたので、早速、普段よくしていただいてるお礼に…くらいの気持ちで購入して読んでみた。
かなり平易な文章で、めっちゃわかりやすい。音楽ビジネスの渦中にいる人も、音楽ビジネスを志す人も、また業界内に30年以上生息しているけど、ほぼシーラカンスと化した私にも(笑)読みやすい本だ。
鈴木さんのお人柄通りの優しい語り口そのもので書かれており、お話を聞いているみたいに、頭に入ってくる。
正直、ここに出てくるアーティストは知らない人が多い(爆)。まったくシーラカンスな私だけど、それでも楽しく読めました。
鈴木さん、ユニヴァーサルにいらっしたそうだけど、そうかー 今、音楽業界ってこうなってんだと思うところ多数。今やレコード会社が、業界の真ん中にいた時代は終わった。私はその時代の終わりの方に、偶然たまたまひっかかったにすぎないんだなぁ。
Spotifyが海賊版との戦いに終止符を打ったという話とかも、なるほど言われるまで、しっかり大きな歴史の流れとして認識してなかったかも。
でもそれこそ私があれこれお手伝いしている日向敏文さんの「Reflections」とか、そういう新しい時代の扉を開けた1曲だよね。なんと86年発表の地味な曲がSpotifyで「世界」に「発見」され(笑)、今や1億3000万再生を記録するなどしちゃうわけで。
ほんと最近のヒットは得体がしれない。しかも一度、そういうサイクルに乗ってしまうと、もうなんか自分ではコントロールできない。言葉悪いけど、まるで違う星の生き物みたいだ。これがヒットなのか?
いや、実際鈴木さんはヒットという言葉にもこの本の中で終わりを告げている。
「ミリオンセラーよりも、ビリオンストリーム」…ですよね。ビリオンって、10億だっけか? ま、日向さんの曲も、あと10倍回らないと、そこまでいかないか(笑)
こういうのが注目される今、宣伝担当としての、私の立場はどうなるんやー!! そもそもスタッフとしては、自分の関係ないところでヒットしても(あ、またヒットって言っちゃった)、何も面白くはない。
…ってのはいいとして、いやはや、音楽って、すごいよな、と思うことしきり。まさにその動きは神のみぞ知る、みたいな感じで、最近の世間のこういう動きには、ひれ伏すしかないのだろうか。
いろんな意味で、私もスタッフとしての自分の存在意義を世の中に示していかねばと思いつつも、いや、音楽の前では謙虚にいなくちゃね、って改めて。そして、この本を読んで思ったことは、いやー 自分がいかに前世紀のスタイルで仕事してるか、ってこと。
もうここに出てくる新しい常識、ほとんどわかってない。そもそもYOASOBIって、そういうグループだったのかー とか、浦島度がひどい。
私が関わっているいろんな音楽も、もしかしたら、もっと若くて現役の子がプロモーションしていたら、なんか別の展開があったかもな、と今さらながら反省しきりだ。アーティストの皆さん、ごめんなさい。今からでもどうにかならんものか…
と、まぁ、いろいろ思ったことは、たくさんあるだけど、一番心に残ったのは鈴木さんの言う「音楽は「あるべき姿」に立ち返った」というところだ。
確かにそれができたからこそ、音楽業界はストリーミングに門を開け、V字回復となったわけだから。
またこの一文だけ取り出して紹介すると、ちょっと誤解を与えるかもしれないけど、最近、音楽家の間でも「食うための音楽」という存在はどんどん薄れてきている、と鈴木さんは解く。
確かに最近の若いミュージシャンと話すと、私もそんな印象を持つ。
「食べる」「食べられない」は、それこそ社会の仕組み全体のことで、ここでアイルランドみたいに芸術家にベーシックインカムが認められるとかになればすごいけど、そういった可能性も含めて、もしかしたら音楽は本来の姿に戻っていくのかもしれない、と。
業界の片隅にいる私なんぞも思ったりするわけです。
そして、そこでいったい何が出来るか。スタッフとしては、本当に考える。いや、結局のところ、考えても、何もできないのかもしれない。
でも「本来の姿に戻る」ことを忘れなければ、この先も音楽業界は大きく間違うことはないのかな、とちょっと思ったのでした。
なんにおいても、そうなんだけど、最近は明確な最短距離を探しがちではあるよね、みんな。でも、そうはいかない、ってことだよね。
この本も、決して明確な答えを示しているわけではないのだけど、でも、ちょっとその「本来の姿に戻る」というのは、いいなと思った。そこを忘れなければ、大きく取り戻せないくらい間違うことはこれからもないんじゃないか、と。
確かにレコード会社とかが音楽ビジネスの中心に存在していたのは、ほんとここ100年くらいの話、なんだよね。
アーティスト側は、とにかく一人でも多くの人に自分の音楽に触れて欲しい、と思っている、と。そこを間違っちゃいけない。
改めて、そんなことを感じたのでした。
それにしても… やっぱり音楽ってすごくいい仕事だと思う。お金が儲かればいいってところに価値観がないのがいい。
そして、いつぞや私が独立した時に、川島恵子さんが私にかけてくれた言葉「ミュージシャンについていけば大丈夫」というところに立ち返る。スタッフやミュージシャンの周りを伴走する人は、それを何度も噛み締めていけば大丈夫なんだ。
最後の方に掲載されているshudouさんの「"いまこれ楽しいな"って感覚を大事に」、ってのも良かった。最近はなんとギターを習いはじめているのだそうで… そういうのだよね。そういうの。
それにしても、鈴木さんのような方がJASRACの理事になられたのは本当に心強い。そういや巻上公一さんも理事になったし、日本の音楽業界もまだまだ大丈夫かも、とちょっと思う。そしてJASRACにあのシール(覚えている人いますか?)現金持って買いに行ってた時代が懐かしい。
そして、もしかしたら5年後には、また音楽業界は違う展開になっているかもなので、その頃にまたぜひ鈴木さんの続編も期待したいと思う。
あ、そうそう、ひとつ面白い個人エピソード。この本を読んでいたら、タワーレコードの名物店員カツオさんが登場してた。
「おっ、自分も知っている人が登場」とニヤニヤしていたのだけど、たまたま数日前、私のfbウォールに誕生日メッセージをカツオさんが書き込んでくれて、思わず「今、読んでる本でカツオさんが出てきましたよ」と声をかけたら、カツオさんはこの本に自分が登場したことを知らなかったご様子。
ばばあ心で教えてあげたら、めっちゃ喜んでいた。繋がる業界仲間の輪(笑)。ちょっと良いことをした気分になったし(笑)。良かったら、この本、ぜひタワーレコードの本コーナーでも積まれるといいよな、と思う。鈴木さん、カツオさんにお願いして、ぜひ。
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◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろすことにしました。公式サイトは近日中にアーカイブ化する予定。自分で作る主催公演や招聘はもうやりませんが、2026年も若干の雇われ・お手伝い案件(笑)があるので、そちらはゆっくりとこなしていく予定です。これからはのんびりと。
◎で、さっそく2026年のお手伝い案件。今話題の(?)のグリーンランドからナヌークがグリーンランド自治政府のサポートを受けてやってきます。もちろんこの企画半年以上前から決まっていたのですが、当初11月にやる予定が、2月になりました。
2月25日(水)、26日(木)、南青山の「月見ル君想フ」にて無料(しかし要登録・ドリンク代700円)のライブがあります。詳細、ご登録はここで。昨日から受付開始してますが、すでにかなり埋まってきました。バンドでの演奏が聴けるのは、このライブハウス公演のみです。
◎そのナヌーク関連で、2月24日には恵比寿のYEBISU GARDEN CINEMAにて、『サウンド・オブ・レボリューション グリーンランドの夜明け』を上映。そこでナヌークのトークイベントとアコースティックセットでちょっとしたミニライブもあり。詳細はここ。MC通訳は大好きなキニマンス塚本ニキさん。チケット発売は2月4日。劇場のサイトにて。
◎ショパンコンクールのドキュメンタリー映画『ピアノフォルテ』のPRのお手伝いしております。東京での上映は一旦終了しましたが、これから公開になる地域もあるようです。みんな見てね! 公式サイトはここ。
◎アイルランドのフォークホラー(?)映画、2月6日公開。 映画『FRÉWAKA フレワカ』詳細はこちら。


