キリアン・マーフィ主演 映画『SMALL THINGS LIKE THESE #決断するとき 』感想第2回


このブログを書いてから、すみません、けっこうたちましたが、今度は一般募集の試写会に当たってしまったので行ってきました。すみません、2回目の試写会。2回目の感想です。でもしっかり感想ブログを書くので、許してください。プロモーションに貢献できればと思います。

クレア・キーガンのこの話。最初は鴻巣友季子さんのツイートで知り、鴻巣先生翻訳の原作を読みました。いたく感動し(感想はここ)、その後映画に臨んだわけです。いや〜、映画も本当に素晴らしかった。

その後、私は再び原作本を日本語で読み、読んでいたら、なんだか英語で読みたくなったので、本当に久しぶりに英語で原作を読みました。英語で読むと、また違った印象!

それはまた別に感想を書くとして… 中編だからあっという間に読めちゃうんですよね、クレア・キーガン。AMAZON UKから取り寄せて、届いた時に、その薄さに感動したのでした。これなら読める。英語でも読める。

英語で本を読むのは久しぶりだけど、ネット上で読んでる英語よりも、うんとパワフルで、研ぎ澄まされた世界でした。その感想は、また別途。

それにしても映画、2回目を見ると細部が味わえるのがいいです、ほんと。

映画は、前の感想にも書きましたが、なんといっても原作に対する尊敬がすごい!!と改めて思いました。原作が好きな人の気持ちを外さない様に、本当に丁寧に作られているのがわかります。

そして原作では… これは『コット〜』と同じなんだけど、主人公のモノローグが多いんです。だから最後のクライマックスは、主人公の心の中の独白だけで、映画みたいなすごい臨場感を作っていくわけだけど、いや、まじで本の中でもたたみかけるようにして迫ってくる。

ビルの心の中に湧いてくる自分の「お父さん」かもしれない人の存在や、心当たりがある過去のエピソード、自分に親切にしてくれた人たちの小さな親切がめくるめくように思い出され、そして行動にいたるわけです。

あの感じ!! あの感じがたまらない。『コット〜』の原作の『あずかりっ子』もそう。映画での、あの寡黙な少女が最後走る感じ。あの走り出す感じが文字で立ち上がってくる。すごいです。

さて、話を昨日のことに戻すと、昨日の一般試写会のことは、鴻巣さんのツイートで知りました。鴻巣さんの、この映画に対するお話や翻訳に関するエピソードを聞きたかったというのもあります。

で、応募したら、通ってしまった。ありがとうございます。

2名OKということだったので、友人と一緒に会場で待ち合わせをし行ってきました。2度目を拝見し、細部を確認。やっぱりセリフとか、かなり原作を忠実に再現しています。

そして…やっぱり再確認したけど、エンディングでアイルランドの洗濯所の最後は1998年と出ましたね。いったい何年に終わったのだろう、洗濯所(私の認識では1996年です)。ま、でもそんなことはケルと警察に任せるとして(笑)(これについて気になる方は前回のこの映画の感想を参照ください)

上映後は楽しみにしていた鴻巣先生と中島京子さんのお話! 中島京子さん、私は『小さいおうち』が、大好きなのでした。角幡唯介さんが大絶賛されていて、それで映画の方を見て、本当に素敵な映画で感動した。(でも本の方は未読。すみません、絶対に読まないと)

中島さんってお話しされているところを初めて見たけど、可愛らしい方で、すっかりファンになっちゃった。中島さんはキリアン・マーフィーの大ファンで、キリアンのインタビュー記事からこの物語のことを知り、映画が公開される前に原作本(英語)を取り寄せたのだそうです。(そしてそのまま積読へ・笑)

中島さんのワクワクな気持ちが伝わるお話ぶりから本当に大ファンなんだなぁ、というのが伝わってきて、なんかこちらも嬉しくなっちゃった(笑)

このあとに、鴻巣さんと中島さんのお話の心に残ったものをここに書いておきます。多少ネタバレあります。またこれはあくまで私が録音もせずに手書きメモでメモったものをベースにしているので、理解のたらないところがあるかもです。

文責:のざきでお願いいたします。


鴻巣さん。ヨーロッパの小説は長編が主なものでノーベル賞も中編は受賞しないんだけど、クレアは中編が多い。FOSTERも、SMALL THINGS LIKE THESEも短い。でも本当に言葉に無駄がない。透明感のある世界。

中島さん。一文一文読み逃せない。丁寧で静か。ちょっと少女小説のようでもある(新しい視点!! なるほど!!)起きていることが後になっていろいろ結びついてくるところもある。奥行き、深いものがある。すごい作家。

これは鴻巣さんの言葉だったかな。五人姉妹で、ちょっと若草物語を踏襲しているところがある。しっかりものの長女、男まさりの次女、絵が上手い末っ子など… また「クリスマス・キャロル」や「デビッド・カッパーフィールド」など、ディケンズなど英国古典ものへのオマージュも。

中島さん。とにかく涙がボロボロ。泣けてしょうがなかった。原作ではもっと「川」が強調されていると思う(確かに!!!)。川の色、荒れている様子など。毎年3人が大晦日に死ぬ…とか。

それがラストへとつながっていく。ラストの彼の行動は、今までの静かな描写から全部説明されている、と。(鴻巣さん、それを受けて、「さすが小説家!」と・笑)

鴻巣さんはこの本を自分で「これを訳したい」とハヤカワに持ち込んだのそうですが、ただ出版にあたり最後の彼の行動が、妻側の視点で見ると相当辛いのではないか、このあとどうなっちゃうんだろう等々、読者から意見が来そうでちょっとドキドキしたそう。

でも大丈夫だった、と(笑)また洗濯所の話はアトウッドの『侍女の物語』に通じる、と。

(翻訳において苦労したことは…との質問に)アイルランド特有の固有名詞をどうするかというのがあった。オーブンの名前、シリアルの名前など。あと当時のアイルランドはとても不景気だったということは意識して訳されたそうです。(なるほど!!)

また原作では割とさらっとしていたシノットの息子のエピソードが映画だとしっかり出てきたので、あれはよかった、とも。

原作ではセァラの子供はすでに生まれているという設定だったけど、映画ではこれから生まれる、という設定。

中島さん、再び。キリアン・マーフィーのとにかく大ファン。本当にぴったりの役だと思う。寡黙な男の役。オーラを消しているんだけど、とにかく素晴らしい。

鴻巣さんは、ちょっと原作のイメージと比較してイケメンすぎるかな、とは思ったそうです(笑)。ちなみに翻訳作業中は自分の頭の中で像を結ぶか結ばないかくらいのイメージで作業をするのだそうです。鴻巣さん的にビルはもっと背が低い感じ(笑)

でもオッペンハイマーでの彼より、あっているし、存在感はピカイチ、と絶賛されていましたね。

なおクレア・キーガン本人と直接お話しした鴻巣さんによれば、作家からしたらこの物語は「普通の善人の頭がおかしくなっていく様子を描いた」のだそうです。ちょっとびっくり!

でも最後の結末を、私たち読者が受け入れるのは、そこにいたるまでの描写がすごく丁寧に描かれているから(もう激しく同意!!!!)。

彼には娘がいて、年頃で、でも洗濯所とマーガレット学院を隔てるのは本当に薄い1枚の壁。(これは何かのメタファーなんですよね…と。深い)何かあったら取り返しのつかない。そこで一歩踏み外してしまった娘への思いやり。

ちなみにタイトルの「SMALL THINGS LIKE THESE」について。本の中でもこの表現は出てきます。ビルが自分の小さな幸せを確認するシーンで。

娘がお店でちゃんとお礼が言える、例えばそういうことに自分の幸せを感じる、と。

ところが、鴻巣さんによるとなんとこのタイトル!! クレア・キーガンいわく「自分はタイトルをつけるのが下手で、編集者につけてもらった」とのこと!!! 驚愕!! 驚愕! っていうか、編集者、めっちゃグッジョブ!!!!

そしてこれはちょっとネタバレですけど、本で書かれているよりも、ちょっと先まで映画では表現されているんです。そして、その最後のキリアンの表情がいい。決してアップにはならないんだけど、そのさりげなさがいい。やばい。思い出しても泣けてくる!!! 

中島さん、こういう映画、一人で見るのもいいけど、こうしてみんなで見るのがいいですね、と。わかります、わかります。

あとビルの奥さんが、ネッドをクリスマスディナーに誘うことについて「一人くらい大丈夫よ」みたいにいうところ。あれは結末への大きなヒントだと話されていたのが、ジーンと来ました。本当にそうです。

最後鴻巣さんが「この家族はきっと大丈夫」というのがわかりますよね、と。「私たちはやっていける」と。「絶対に乗り切れる」と。

ううううう、鴻巣さん、中島さん、本当にありがとう )))))))) なんか落ち着いたよ。本当に。これはそういう映画です。前向きな映画。

さていよいよ明日から初日。私はもちろん映画館でも見ますよ。パンフレットが楽しみ!! 誰が書いているんだろう。




この映画、都内では新宿武蔵野館、そしてシネシャンテ、ヒューマントラスト渋谷、アップリンクなどで上映になります。絶対に見て。皆さんの感想もお知らせください。その他、全国でのスケジュールなど、こちらの公式サイトへ。

試写会のあとは有楽町駅前のこちらへ。最高! 何を食べても最高に美味い。


◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろすことにしました。公式サイトは近日中にアーカイブ化する予定。自分の主催公演や招聘はもうやりません。ただ2026年も若干の雇われ・お手伝い案件(笑)があるので、そちらはゆっくりとこなしていく予定です。

◎現在リリースしたCDの販売は終了しておりますが、書籍はあいかわらず販売しております。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。

◎神保町すずらん通りのパサージュにてケルト書房という棚を運営しております。ケルト関係の書籍や友人の書籍などを販売中。こちらへどうぞ。


◎パンデミック後くらいから作曲家:日向敏文さんのお手伝いしております。昨年の6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースされました。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中


◎その日向さんは、91年の大ヒットドラマ『東京ラブ・ストーリー』のサントラを手掛けていたわけですが、そちらが35周年記念のリイシューされることになりました。詳細はこちら。 最新インタビューをotonanoにて連載中!