映画『三人の女強盗』を観ました。なんとサスペンス! #アイルランド映画祭2026

 

©︎Púca Pictures 


この流血のスティル写真も強烈な『三人の女強盗』を見てきました。アイルランド映画祭、3日目。私が参加するのは、これで2日目です。今年は何回見れるかなぁ〜

それにしてもこの週末のガーデンプレイスはハワイのイベントでごった返し。あまりの人の数に少々疲れたのも事実です。すごい人だよなぁ! 人混みをかきわけ、奥に進むとGARDEN CINEMAがある。

で、この映画ですよ。なんと本作はサスペンス。しかも話がとても複雑。正直、緊張して見ていないと、何が何だかわからなくなる。時間が事件の瞬間からどんどんさかのぼっていくので、正直ぼーっとしてられない(笑) 

実は昨日は朝からポーランドのお料理教室に行き、夜のこの映画の上映まで、自分の時間がドーンと空いてしまったこともあって、空いた時間に話題の『サンキュー・チャック』を見たりしていたのでした。

あれもいわゆる話を見失わないように見ていないとダメな映画なんで、それが2本続いて、なんか終わったあと、私は結構ぐったりしちゃった(笑) 

それにしても、すごい。まずは全編アイルランド語だということ。そしてあの『コット、はじまりの夏』の(預けられ先の)ママ役をやってたキャリー・クローリーが主演だということ。

彼女はすごいですね。本当に素晴らしい圧巻の演技で、ぐいぐい引き込まれました。今回は『コット〜』と違って、自分にも、家族にも厳しい女性警察官の役です。

話は中年のもうあまり若くないおばちゃんたち3人が銀行に強盗に踏み込むところから始まります。でもなんかモタモタして、全然強盗がうまくいかない。大丈夫か、これ…って思っていると、話が急に戻されたり。映画はそんなふうにして進みます。

そして何度かストーリーが逆に戻されると(笑)、えっ彼女は実は警察官だったの?とか、えっ、そういう経緯だったの?と、話のあちこちが明らかになる。それがスリリングで面白く、最後は、なんというか大きくどんでん返し。いや、すごい。

これ脚本、すごく頭のいい人が書いてるんじゃないかな。そのうちハリウッドでリメイクされちゃったりして…と妄想が広がる(笑)。

いや〜、アイルランド、こんな映画が出来るようになったんだ。なんというか、文化に投資している国は違いますよね。本当に素晴らしい俳優さんたちが揃っているし、製作陣もすごい。

ただ実際、相当集中して見ていても、この強盗にいたるまでの諸事情、詳細について、説明らしい説明がほとんどなされないので、私もちゃんと内容を理解したのかなと不安な部分も多々あり。もう一回くらい確認のために見ようかな…と思ったのも事実。

あ、そうそう、主役のマレード(コット・ママ)のお姉さんのケイト役の女優さんは、『ブルックリン』にも出てらしたようで、彼女の演技も迫力がありました。というか、女性陣、みんな迫力です!

一方男性陣はいまいち存在が薄いのですが、「絶対にこいつあとでストーリーのキーを握るようなすごい活躍をするのでは?」という、いかにも頭も勇気も職業意識も頼りないコット・ママの男子部下。

彼は私の期待した通りの結果になりましたから、ぜひ最後まで彼の勇姿をしっかり見てください。最後、現場に向かう時の、へっぴり腰の、その走り方!! ものすごい演技。

これぞ、まさに世界最高のへっぴり腰と言えますから、注目です! どうやったら、あんなふうに走れるんだろう。

そして昨日は映画上映後に法政大学の梨本邦直先生による、本作の中心を担っているゲール語について、短いながらもとてもわかりやすい解説がありました。私も知ってるようにみえて、全然アイルランドのことわかってない部分が多いので、とても勉強になりました。

下記は私が録音もせず手書きでメモったことですので、聞き間違いや誤解、ちゃんと理解していない部分が多々あるかもしれません。あくまで文責:のざきでお願いいたします。また会場にいた方で「それは違うよ」ということなどありましたら、ぜひお知らせください

梨本先生はこの映画、3回見たそうですが、いまだにわからない部分があるとのこと。でもミステリーを解く楽しさもあり、何度でも見たくなりますね、と。

先生によるとアイルランド語の映画というのは、過去いくつかあって、最初の長編は1978年の『ポチーン(あの芋の蒸留酒の名前ですね)』というんだって。知らなかった!! それが長編映画の一番最初。もっともそれまでも短編はいくつか存在していたんだって。

また結構ドキュメンタリーも多いですね、とのこと。

やはり2022年の『コット、はじまりの夏』が大きく(先生がCailín Ciúin」とゲール語でタイトルを言ったのが、ちょっと萌えポイント・笑)、あれはアカデミーにもノミネートされたし、あとは「ニーキャップ」。そして本作が代表作と言っていいだろうとのこと。(あと『フレワカ』もありますよね。あのサイコホラーは実際当たったんだろうか…)

ベルファースト合意以来、北アイルランドと共和国の融和をはかるということで、両政府が資金を提供し、アイルランド語の映画が積極的に作られるよういなったのが業界にとっては大きい。でもそれもトラブルの多かった時代に戻らないようにしようという両国の努力、ですよね、と。

現在アイルランドが日常的に使われているのはいわゆる「ゲールタハト」の3つのエリア。
(1)ドニゴール(2)コネマラ(3)そしてケリーから西コークのあたり、で、人口が20,000人から25,000人くらいいるのだそうです。

ただアイルランド独立時から、基本小学校からアイルランド語は学校で習うという義務教育の部分があるので、基本共和国で小学校行った人なら、アイルランド語は習っているんだそうです。

もっとも全国民が話すのは無理で、(ここ面白かったポイントなんですが)「学校で習うと、みんな嫌いになっちゃうんですよね」、と。

なので大人になっても学校で習ったことを覚えている人は少ない。でも国勢調査などをすると40%の人は「自分はアイルランド語を話せる」と答えているのだそうです。

となると500万人のうち200万人がしゃべれることになるんだけど、「それはもしかしたら国民の期待値で、実際にはもっと少ないんじゃないかなと思っている」という先生の厳しい評価(笑)。

実際日常的にアイルランド語を毎日もしくは最低でも週1回使う人というのは20万人と言われているので、結局実質は200万人の10%の20万人。この人たちは、いつでもアイルランド語を使える準備がある。理解はできる、という認識で良いようです。

一方、北アイルランドの人口は200万人いる中で、同じような国勢調査をしたところ、こちらは4%だった。ということは8万人の人がアイルランド語を使える、と。

となるとあわせて28万人。でも先生によると、これもちょっと「過大評価かなぁ」という感じなんだそうです。

ちなみに本作の原題の『AINTAS』は、「ひとつになること」。英語で言うならUnionとか、Togethernessというような意味。コミュニティとか、田舎に住む人たちの連帯、絆みたいなものを言っている。

映画の中で採石場の閉鎖、というのが出てくるのだけど、この理由については明確に語られていないのも興味深いけど、でもそれが三人の女強盗につながっていく。

これはあとのQ&Aで出てきた質問への答えなんですが、先生いわく、こういう小さい町で、メインの産業が破綻しちゃうと、その影響力が本当に大きい。

例えば外国の工場が引き上げちゃうみたいなこととか、大規模リストラとか。

でも映画の登場人物の会話からすると、不況というよりは、この映画のケースは経営の失敗。結局、オーナーは悪人だったわけですから、彼の自分勝手な理由で潰れた、と言っていいのではないかと思います、とのと。 

またマイレットとケイトの家族に一体何があったのかというのは、明確にされていない。

ちなみにアイルランド語には方言があって、先生が経歴を調べたところによるとキャリー・クローリーはウォーターフォード出身で、ダブリンのカレッジを出ていて、小学校の先生をしていた、と。

つまり学校の先生になるにはアイルランド語ができないといけないので、アイルランド語はペラペラな様子。

ちなみに北アイルランドのアイルランド語は、なんとドニゴールアクセントになるんですって! すごいよね。

というのも、北ではいったんアイルランド語は、まったく死に絶えてしまったので、あとからドニゴールの(標準?)アイルランド語を移植するような形になったそうです。

だから北アイルランドのこの辺で話されている、という土地に根付いているというよりかは、ベルファストの西で、カトリックの、言ってみれば70年代から習得者のコミュニティという要素が強いそうです。これが2000人から2500人くらいの規模のグループ。

先生によるとこの映画から聞こえてくるアイルランド語のアクセントはバラバラなのだそうで(笑)、ケイト役のブリージ・ブレナンなどは「後から勉強していた」っぽいのだそうです。

面白いよね。

先生のお写真を撮り忘れてしまったので、公式のこちらのツイートをお借りしてきました。主催者の皆さん、ありがとうございました。


というわけで、本作は、まだアイルランド映画祭の期間中に2回上映されます。6月4日(木)、そして8日(月)です。場所はYEBISU GADEN CINEMA、19時からですよ。

アイルランド映画祭、公式サイトはこちら


ネット、探したら『ポチーン』のトレイラーがあった!

しかし78年と言ったら、ポールが「Welcome Here kind stranger」を出した年。ゲール語のアルバムと言ったらクラナドの「In concert」か… Bothyもパリのライブアルバムを出してましたよね… 

デ・ダナンはまだスタートしたばかり。アルタンはまだ影も形もなく…。いや、マレードは14歳でフランキーと出会ったはずだから、もう始まっていたのかな。

どっちにしても、そんな時期ですから、すごいですよね。

◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろし、公式サイトは近日中にアーカイブ化予定。自分の主催公演や招聘はもうやりませんが、2026年も若干の雇われ案件があるので、そちらはゆっくりとやっていきます。

◎よく聞かれるので、ここに載せていこう。最近観た中でベストな映画はこれベストな本はこれです。

◎現在CDの販売は終了してますが、書籍はあいかわらず販売中。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。

◎神保町すずらん通りのパサージュにてケルト書房という棚を運営しております。ケルト関係の書籍や友人の書籍などを販売中。こちらへどうぞ。

◎アイルランド映画祭、開催中。ぜひご来場ください。5月29日よりYEBISU GARDEN CINEMAで2週間。毎日19時から。詳細は公式サイトirishfilmfes.jp  公式X@irishffjp まで。

6月9日にはドーナル・ラニーのドキュメンタリーの映画上映と、ピーター・バラカンさんの解説あり(野崎は聴き役として登場予定)。予約開始はまだ先ですが、今から予定しておいてください。


◎最近、こんな応援記事を書きました。ぺッテリ・サリオラの来日記念盤@Intoxicate

ピーター・バラカン Presents 未来へのプレイリスト 毎週金曜日 ETVにて22:30から放送中。6月いっぱいまで続きます。

◎ケルティッククリスマス2026、発表になりました。今年はアルタンとソーラスが来日。詳細は公式サイトへ。

◎あいかわらず無印良品BGMの仕事はしております。この4月27日より昨年録音にかかわったデンマーク編が配信スタートしております。良かったら、聴いてください。店頭ではすでにその2週間くらい前から流れているようですが、結構まだBGM29のスコットランドもたくさん流れますね(のざき調査による)。

 

◎パンデミック後くらいから作曲家:日向敏文さんのお手伝いしております。昨年の6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースされました。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中


◎その日向さんは、91年の大ヒットドラマ『東京ラブ・ストーリー』のサントラを手掛けていたわけですが、そちらが35周年記念のリイシューされることになりました。詳細はこちら。 最新インタビューをotonanoにて連載中! 


 

 







◎さらに今まで配信されていなかった『アナザー・グラフィティ』『妹よ』『陽のあたる場所』『愛という名のもとに』『ええにょぼ』も3月25日より配信スタートしております

◎また「Two Menuets」がこの5月25日よりGucciのキャンペーン「The Original Sinner」で使用されています。改めて聞くと良い曲!  Gucciのキャンペーンサイトはこちら