有緒は友達なので、普段みたいに呼び捨てで呼び(笑)今回は感想を書いちゃうけど、いやーーーー、この本はやっぱり彼女の最高傑作だよな、と思った。売れているのはどうやら国連勤務時代を描いた「パリ」シリーズのようだけど、私はこれが一番好き。やっぱりこれが一番パワフルである。
まず、この本は2013年に最初に発売になって和田静香がブログですごく褒めていたので買ってすぐ読み、一気読みして、超感動。それ以来、川内有緒の大ファンなのである。当時和田さんが書いていた「レポ」という雑誌に有緒も国連での話を寄稿しており、それで興味を持ったこともあったが、いや、国連話も面白いけど、こっちはもう本当に一気に読みだった。そして、その後、この本は文庫本になって、そしてまたこのような<完全版>という形で世の中に出ることになった。この経緯については、有緒がnoteに書いた文章がすごく良いので、是非読まれることをお薦めしたい。
本を死なせない|川内有緒(かわうちありお) @ArioKawauchi #note https://t.co/l00Y6R7Grd
— 野崎洋子 (@mplantyoko) July 19, 2020
まずは多くの人が指摘しているのだけど、装丁がものすごい素敵なのだ。すごいでしょ、これ。
さらに私が感激したのは、この本をかがる糸。色がそれぞれ違うんだよね。写真で見えるかな、この糸の色。なんて素敵なんだろう!!
装丁はあの矢萩多聞さん。あの『タラブックス』の方だ。いや〜、素晴らしい。インドというかベンガルいいなぁ。なんかこう「おおらかなところ」と「繊細なところ」が共存しているっていうか、このハイブリット感がたまらんわ… 実は北とぴあで何回か「なんちゃら祭」やってきて、実は一番楽しかったのがインド。関わってくれた人、全部が素敵で、また何か一緒にやりたいんだよ、と思えるイベントだった。いや〜、本当に惹かれるんだわ。今度はなんというか「ベンガル祭」とかやってみたい。まぁ、それはさておき。
本のことをまったく知らない人に説明すると、有緒はパリの国連に勤めていてそこでひょんなことからユネスコの無形文化遺産「バウル」という存在を知る。謎めいた存在のバウル。いったいどんな音楽を奏でるのだろう。そして仕事をやめて東京に戻ってきてからその「バウル」を探しに彼女は友達のカメラマンを誘ってバングラディッシュへと旅立つのだ。
有緒に同行した中川さんの写真が今回はじめてカラーでたくさん紹介されている。素晴らしい。
この本を読んだ1回目の感想はこれ。2013年だね、初めて読んだのは。その時、感激した私は「野崎洋子賞」を彼女にあげたのだが(笑)、このあとこの本は新田次郎賞を取り、彼女には一緒に某学校に行って講演をしてもらったり、他の本も読んだり(それぞれの感想はここ→「パリでメシを食う。」「パリの国連で夢を喰う。」「晴れたら空に骨まいて」など)、彼女の妹さんとお母さんがやっている山小屋というギャラリーでお母さんの料理レシピ本を買ったり、一緒にご飯作ったり食べたり、お母さんのご飯御馳走になったり(本当にこれが最高に美味しいのだ!!)、某憧れの作家さんも巻き込んでオフ文壇バーベキューしたり、交流が続いているのだった。先日見て感動した映画『タゴール・ソングス』も彼女が教えてくれたものだ。(私の映画の感想はここ)
それにしてもバウル、すごいな。今回は、完全版ということで、初めてみるカメラマンの中川彰さん(本が最初に出る前に突然亡くなっている)のたくさんの写真や、有緒が書いた「中川さんへの手紙」を読めばいいか、と思い、それらをチェックしたらすぐここに感想を書く予定だったのだが、やっぱり本編をもう一度読みたくなり、結局また最初から最後まで読んでしまった。読み始めると、最初に読んだ時と一緒だが、印象がだいぶ違う。でも一気読み。あっという間に読んでしまったということは変わらず。本当に本当に引き込まれる本だ。すごい。
今改めてこの本を読むと、なんだ、タゴールもここに出てきてるじゃないか、ということだ。佐々木さんの「タゴール・ソングス」の映画を見た時は「タゴールって知らなかったなぁ」などと悠長に考えていたのだが、いやいやいやいや本読んでるよ、自分って(笑)。そんなふうに固有名詞はどんどん忘れちゃうんだけどさ、そんなことより言い訳になっちゃうけど、重要なのはこの本が伝えようとしている「バウルのスピリット」なのだ。それを今を生きる私たちがどう受け止めるか。そして著者が自分を発見していく過程。そこなんだよね。とにかくぐいぐいぐいぐい引き込まれ、あっという間に久しぶりに夜明けを見ちゃったよ。病人は早く寝なくちゃいけなかったんだが…(笑)
それにしても歴史を知れば知るほど、先日のデンマークの監督のドキュメンタリー映画じゃないけど、列強国はいろんな国にひどいことしてきたんだなぁ、と思う。結局私たち文化に関わるものは、この先100年くらいかけてそれを炙り出し、人類を反省させていく使命があるのかもしれない。コロナ禍うんぬん言われるなかで、なんかそういうことを思った。私たちには使命があると。
ちなみにこの<完全版>発売を記念して、先日見たドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』の佐々木監督と有緒のトークショウもある。私はまだちょっと夜は出歩けないのだけど、是非時間がある方は行ってみてほしい。映画も最高だし、二人の素晴らしい女性のトークが聞けるよ。そういえば、有緒は本人も公言しているが、確か映画制作をやりたがっていたことを思い出した。いつか二人で一緒にバウルの映画を作ってよ。