いやーーーーー めっちゃ良かった。もう6月だし、今年は去年以上の作品が出てこないんじゃないかと思ったけど… これは素晴らしい!! 圧巻です。『ブータン 山の教室』
とある人が「きっと野崎さんは好きだと思う。音楽も印象的だし」と言ってくれたので、見に行った。そしたら、もう大ヒットだったのでした。響きまくり!! それにしてもこの映画、岩波ホールでかかってたんだね… 知らなかったわ。やっぱあそこには映画の神様がついてるわ…
冒頭で初日に寝坊した先生を起こしに来た女の子ペム・ザムが登場した瞬間から、なぜかずーーーーっと泣いてました。じわーーーっっって感じで。なんだろう。お涙ちょうだいには絶対になっていない。でもあの子見てると、もうそれだけでいっぱいいっぱい。このブログを書きながら、また泣いています。コロナのせいなのかな。なんか最近、泣けるんだよなぁ。
なんというか、普通の映画です。普通の映画。別に奇跡も起こらない。でもそのリアルさやお涙頂戴ではないところが、かなり私の大好きな映画『ローカル・ヒーロー』に似ている。
そう、私たちはあの場所には住めない。でも…だけどあそこでの日々がその人の一生を支えていくんだよね。この終わり方、嫌いな人もいるかもだけど、私は大好き。こうでなくちゃ。映画はこのくらいリアルじゃなくちゃ何も伝えられないと思う。いいよ、すごくいい!!!
ブータンのことを国民全員が幸せな夢の場所みたいに書いてないのも良かった。実はブータンって、いろいろ思うところがある。私も良く知っているわけじゃないけど、興味ある人は高野秀行さんのこの本を読んでみて。すごく興味深いから。ある意味、世界の理想を実現しているように見える幸せな国ブータン。私たちはそこに天国を夢見る… でも高野さんの本を読むと見えてくるものがあるんだよね。高野さんのブータン本の感想はここに載せてある。この映画、ブータン人の監督だから、その辺はリアルだし真摯に描いていると思う。必要以上に美化もしてないし、必要以上に卑下して、見る側の夢をつぶしてもいない。ありのままの、今の、おそらく今だけのブータン。多分この場所ももうすぐ消滅してしまうのだと思う。
しかし、この映画びっくりしたことに、監督はカメラマンが本業で、めっちゃ印象的な女の子ペム・ザムは子役さんではなく、本物の彼女なのだ。だから映画というよりは半分ドキュメンタリーっぽいのだ。
そこがちょっとこの映画を思い出させた。この映画も半分ドキュメンタリーであり映画でもあったよね。こっちはただ話の盛り上げを作るためにエピソードを盛り込んでおり、フランス人の監督が撮ってる。グリーンランドに行くデンマーク人の先生の話。私の感想はここ。
これはこれでまぁまぁ嫌いじゃなかった。でも!!! 『ブータン 山の教室』の方がリアルで、こっちの方が圧倒的に良い。それは、すべて、監督の視線および出演者というかカメラに映っている人たちによるところが非常に大きい。村長さんもいいけど、私はもう最初からあのミチェンという先生の面倒見役の彼に惚れた!! なんか、かっこいい。やる気のない先生を見て静かに力なく微笑むところとか、とってもいい。静かに、都会から来た何も知らない先生に対する皮肉もあるのかもしれないんだけど、決して先生を馬鹿にしたりしていないし、冷たい感じは一切受けない。そこのサジ加減が本当にふるってる。パンフレット買ったらバイオのところに「音楽と演じることが好きな失業中の土木技術士」って書いてあった。良、良すぎる!! 良すぎるよー。そして、もちろん歌が上手い彼女も最高に素敵だ。この彼女は都会のカレッジに通う歌い手さんだそうで、今回が俳優デビュー。彼女も笑顔に嘘がなくってすごく良かった。
でも、やっぱり圧巻はあの子だよーーーあの子。ペム・ザム!!! ペム・ザムにやられたー もう最高である。実際、彼女の家は、映画で描かれている同様の家族であり(お父さんはアル中だで、祖母と暮らす)車を見たことがないという。あの子の瞳に心を動かされない人がいたら、それはうそだと思う。もう素晴らしいんだから!! あぁ、やばい。ほんとにあの子すごい。
これは魔法だ。映画の魔法!!
さてこの本編映像からのクリップも見てね。ONE OF一番好きなシーン(先生は未来に触れることができる、というシーン)と、監督が初めてペム・ザムに出会ったときの彼女の歌(2分くらいからスタート)。すでに、この映像でかなりやばい。「ニトイーキタト、ニトイーキタト、ズンズンズン、チューレレズンド、チャンランラーン〜♪」
この、下に貼り付けたインタビューもすごくいいからぜひ読んでみて。ドルジ監督、是枝監督のファンらしい。わかるよー 是枝監督、この映画見てくれたかなぁ!!
ブータンには映画産業というのものがなく、映画上映も市営ホールみたいなところでパソコンを使って行われたんだって。そして何日もかけてバスにのって見に来てくれた親子とかいるんだって。だからこの映画の出演者たちもまだ出来上がった映画をみていないのだそう。
ブータンに映画はないけど、私たちみたいな外国人がこの映画を見ることで、彼らの応援になる、と監督は語る。監督いいよ!!! 「ブータンの映画産業はとても小さいです。私たちは外国で成功することにかけています。(この映画が)日本を居場所を見つけたことを光栄に思っています」と。あぁ、やばい、これは応援しなくっちゃ。
やばかったー この映画ー 今年のNO.1かもー:ブータン、ネットの普及で変化する幸福の意味、そして現地の映画事情は?「ブータン 山の教室」監督に聞く #ブータン山の教室 https://t.co/75dt1kMolr
— 野崎洋子 (@mplantyoko) June 7, 2021
都内では岩波での上映を終え、現在銀座のシネ・スイッチで1日に一度だけかかっているみたい。みんな急げ!!
あと、この映画がなんでこんなに響いたかっていうと、週末に見たミャンマーのDr.Sasaの講演の影響があったと思う。Dr. Sasa龍馬(命名:高野秀行さん)、ミャンマーの本当に貧しい少数民族の村出身で、村を出る時、村人たちが鶏をプレゼントしてくれてそれを腰にくっつけて行ったんだって…そこからはもう想像を絶するようなすごい貧しさと苦労の中でドクターになった。そういうのが頭に残っていたからだと思う。まぁ、こっちはミャンマーで、この映画はブータンだけど。
先週末に行われた配信でのスピーチ、素晴らしいと思ってたらテキスト出た!
Japanese language version of H.E. Dr. Sasa's address to Japanese Parliamentarians, Professors and Researchers
— Dr. Sasa (@DrSasa22222) June 7, 2021
ミャンマー国民統一政府 国際協力大臣兼ミャンマー広報担当 ササ医師の日本の国会議員とのセミナーにおける演説 (仮訳) 2021 年6月6日 pic.twitter.com/BtssSrcwvs
Dr Sasaのプロフィールはここ。 本当に地球上のすべての人が幸せでありますよう…ナイーブすぎる言い方かもしれないけれど、そう願うしかない。
あっっ、映画といえば… こちらもよろしく(笑)。私はたぶんほぼ毎日のように通うことになりそうです。うちの映画が有楽町でかかります!! うれしすぎる。7/14にはトーク出演もあり。みなさんと一緒にこの映画を見れるのがとても楽しみ。詳細はピーターさんの映画祭の公式ページまで。
それから映画『サウンド・オブ・レボリューション〜グリーンランドの夜明け』公式サイト、最近アップデートしました〜。スマートフォンでも見やすくなったと思います。