浦久俊彦『フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか』を読みました

ブックレビューがたまっています。

ブタペストに持っていく本として、積読山からこれを選びました。このくらいの新書だと、割と普段は速攻で読み終わるのですが、今回はなんだか旅の最中、文字を見る気がなく(笑)デレデレと時間を読んでしまった。

が、それがイコールこの本がエキサイティングではないということではなく、いや、まったくもって面白かった。


私が持ってたリストのイメージ「超絶技巧でモテモテ。アイドル的存在のピアニスト」は、彼の生涯のほんの一部でしかなかったことが分かった。このタイトルも帯も、多少煽り気味である。

本文の方は、もっと落ち着いていて、著者の方がリストを本当に尊敬してる感覚がとてもよく伝わってくる。真面目なリストの後半生も丁寧に描いていて、それがとても良い。読み終わったら後半の方が、私としては印象深かった。とはいえ、派手なのはやはり前半かな。

リストが派手に活躍していたのは、本当に彼の人生の一部にすぎず、後半はかなり真面目に教育にあたったり音楽の普及に尽力したんだよね。そのある意味、ちょっと「燃え尽き症候群」みたいなこともあったんじゃないかとも著者は書いている。

まぁ、だからこそハンガリーで尊敬される存在なのかもね。

しかしショパンもリストもパリに向かうよねー。歴史は知れば知るほど、おもしろい。それはパリには「音楽サロン」という、音楽家を食わせてくれる最高の場があったからだ、と著者はいう。

うーん、なるほど。さすがパリ。フランスは、私はだいたいにおいて好きじゃないのだけど、彼らには負けるよなと思うことは何度も経験した。あのジョイスのユリシーズだって「パリ」がリリースしたものなのだ。

ちなみに「サロン音楽」と「サロン風の音楽」のくだりは、まさにアイルランド音楽と、私たちが時々「おケルト」と呼ぶような音楽との違いと非常に似ていて、読んでいておもしろかった。当時も今も変わらんなー 何かが流行ると、その亜流みたいなのが出てくる、と。

また音楽サロンについての記述で、著者の方が「身分や財産を保証されていた貴族にとって、「もの」自体にはさほど大きな意味はなかった。彼らにとってはものの背後にある精神性の方が重要だった…」というあたりにはグッと来た。だからこそ、昔のお金持ちは芸術家を支えた。

そこなんだよね、音楽の意味って。ところが今のお金持ちは…どうなんだろう、いったい。あと100年後、200年後の人たちは、今のこんな社会を作っている私たちをどう評価するんだろうか。あの天才を支えなかったんだって?ってことになりやしないか。

やっぱり衣食住足りてからの芸術なのかと思わないわけではなかったが、ほんと現代における音楽の存在意義や価値、あれこれを考えると、まさに感慨深い。

一方で、現在でも、とても高いコンサート・チケットを買って音楽を聴きに行ったり、普段からも音楽を聞くことで、なんとか辛い現実を忘れようとしている人もいるわけで。

この本には、当時のお金持ちたちの、ある意味では「お金に対する恨みや怒り」なども説明されていて、なるほどと唸った。「破滅への美学」ともいうべき社会への復讐心。うーん、深い。

他にもなるほどと唸る部分はたくさんあり、とても良い本でした。またゆっくり再読したいな。


いいなぁ、辻井さんのカンパネラ。辻井さんのような音楽家にとって、音楽とはどういう位置にあるのかなぁといつも思ったりしている。このくらい上手く弾けないと、カンパネラを弾く意味はないのではないのか…とか思ったり。

いつかゆっくりこの曲を練習したい。1小節ずつ、少しずつやれば、あの漁師のおじさんみたいに弾けるようになるかもしれない。



フルックの来日公演はもうすぐ。7回目の来日ツアー。

FLOOK 2025 
22 April(火)南青山曼荼羅 SOLD OUT 
23 April(水) Shibuya www(こちらはスタンディング+多少椅子あり) 
24 April (木)Shibuya www(こちらは全員着席公演) 
26 April(土)春のケルト市(豊洲) 
27 April(日) 横浜 Thumbs Up 
28 April (月)名古屋 Tokuzo 
30 April (水)京都 磔磔 
詳細はこちら http://www.mplant.com/flook 

 ◎春のケルト市 THE MUSIC PLANTが主催するイベントとしての「春のケルト市」はこれが最後になります。ピーター・バラカンさんのDJ、そして豊田耕三さんもゲストで登場 
 
◎FLOOKの来日を盛り上げようというわけで、楽しいプレイベントをたくさん用意しました。すべて野崎立ち会っております(FLOOKの、一部の公演チケットも持って歩いてるので、よかったら私から買ってね!) 
3月13日(木)~15日(土)  渋谷ヒカリエ8F ケルト書店 春のポップアップ 
3月28日(金)~30日(日) 神保町Passage ケルト書房 春のポップアップ 
4月5(土)、6日(日)高円寺ケルトまつり 
5日はケルト市+バグパイプ演奏+野崎とビートルズ専門家の藤本国彦さんとのトークイベント「ケルト文化とビートルズ」 
6日は本の長屋にて豊田耕三さんの新しいカルテット KOZO TOYOTA FLAT QUARTETのライブが行われます。 
豊洲文化センターにて。ケルト市のチケットをお持ちの方は無料。 

◎あとこちらはFLOOKのブライアンが参加するロシアの御大の公演。 
祖国を思い音楽活動続けるボリスの熱い魂に触れてください。 


めずらしく70分ほどのライブ映像。生で見ると全然違うよ! ぜひ体験しに来てください。