入院中も、ヤクルト1000は欠かさず飲んでいた。
写真は友人の奥様からいただいた応援マスコット。ドイツのキャラクターらしい。こういうの、ありがたいよねぇ。病院での写真を撮るのに、だいぶ活躍してもらいました。詳しく知りたい方は、私のTwitterの5月8日くらいから16日までをご覧ください。
ちなみにもっと言って、いったい何の病気かとかわからない人は、ここに割と最初からのストーリーを書いてあるので、こっちを読んでください。何度も説明するの、面倒くさい(笑)
今回もなんとか手術を乗り越え、病院から出てきました。それで、また友人に聞かれて一人ずつ説明するのが面倒なので、この投稿にあれこれを書いておきます。というか、私としては実生活ではなるべくこのことで時間を取られたくないのだ。
友よ、リアルで会ったなら、私の入院武勇伝よりも、もっと建設的な話をしよう。
しかし三度目とはいえ、全身麻酔というのは臨死体験にも似ている。「このまま目が覚めないこともありうるんだ」と思えるあの感じ。このまま死ねたら、もしかしたら最高に幸せかもしれないなんて不謹慎な事も思ったりもする。
最初の手術の時は、2年先までツアーが入っていたので、全身麻酔の前に…というか入院の前に遺書的なものを自宅の机の上に用意しておいた。
このツアーは誰々に頼んで催行してください、赤字になったら両親に補填されてください、そしてこっちは早めにミュージシャンに伝えてバラしてください、等々。
2回目の時は、面倒くさくなって何も準備せずに全身麻酔した。
3回目の今回も、もちろん面倒くさくなったのと、そもそもギリギリまでツアーしてて、GWのおかげで平日が2日しかない中で、すぐ入院だったから、何もできなかった。
あとツアーは年末のポールを残すだけだし(7月のクイヴィーンは私に責任があるのは公演日の1日のみ)、私に何かあればプランクトンさんがポールに連絡してくれるだろう、と。
そのポールに対しては、私の手術の話を、他の誰かから聞いたら嫌だなと思い、割と真っ先に連絡した。
手術するけど軽いから心配するなと入れたら、半ば切れ気味に「オレは心配しとらんぞ(怒)」みたいなメールが速攻で来た。笑える、ポール。山口洋先輩に言われたけど、私とポールは結構夫婦漫才なのだ(笑) この悪態合戦は私とポールのプレイなのだ。プレイ(笑)
今回も、さぁ全身麻酔となり手術室の天井のライトを眺めながら思ったのは「ま、どうにでもなれ」ってことと、6月25日発売の日向さんのニューアルバムのことだった。
でも仕込んだ取材は私がいなくても無事に掲載されるだろう。アナログの入稿も終わっているし。私がいなくなったら日向さんは雑務が増えて困るだろうけど、乗り切れないわけじゃない。
しかし我ながら潔い。実際に自分が死ぬ時もこのくらい潔く死んでみたいものだ。
それにしても今回の手術は2回目と同じ手術で、同じ病院なのに、だいぶ様子が違っていた。まずは前回の手術ではなかった、手術直前のCT撮影。なにやら鍼みたいなものを体に入れられた。(もちろんすべて説明を受けて紙をプリントしたのをもらったが、まったく頭に入っていない自分なのであった)
その鍼が刺さったままの状態で、全身麻酔を待つ3時間くらいの間が一番辛かった。そして目が覚めた時は、すでに集中治療室の中だった。前は病院の廊下を移動していく時には意識があったのに。
で、今回一番感動したのは集中治療室の環境だった。前回は野戦病院みたいだったのに、今回はすごくよかったと主治医に話したら「偶然じゃない?」と主治医は言っていた。そんなもんだろうか。集中治療室の、あの日の担当看護師さん、本当にありがとう。
手術が終わってしまえば、しんどいのは管や点滴が体中についている数日だけ。あとはそれらがすべて自分の身体から外され、少しずつ人間に戻っていく感じが、最高だった。痛みはありがたいことにほとんど感じない。ただただ手術中あげていた左肩が痛いのであった。
元気なおかげで妙にハイになってしまい、帰るまでの数日間は結構な高血圧で、看護師さんたちにびっくりされた。友達が来ると興奮してベラベラと自分の武勇伝をしゃべってしまう。
そう手術は成功してしまえば、単なるネタなのだ。本当に先生方には申し訳ないのだけれど。病気だったこと、不安だったことはすべて一瞬で忘れてしまう。
それにしても今回も友達っていいなぁ、とつくづく思った。なんつーか、私のことをよくわかってくれている人たち。私を適度にほおっておいてくれる彼女らは、絶対に自分からは質問をしてこない。
時々、映画『プラダを着た悪魔』のミランダを思い出す。「ミランダにはこちらから質問をしてはいけないの」とエミリーは言った。あんな感じか?(笑)
田舎に住む高齢の親や、私のことをよく知らない人ほど、心配している感じで、あれこれ質問してくる。…などというと、ばちがあたりそうだけど。いや、ありがたい。ありがたいんですよ。でも、正直病気になると、もうすべてが面倒くさいんだよね。
私は自分のことだけでも忙しいのに、自分を心配してくれる人のことを思いやるゆとりなんてまったくない。
つくづく病気になると人間は性格が悪くなる。っていうか、もとの性格が強調されるっていうけど本当だよな。自分はもともと努力して、やっとまともな人間になれたというくらい性格が悪いので、病気になるとすっかり性格も悪くなり、困ったもんだと自分でも呆れる。
それにしても、なんだかんだで集中治療室に隔離されていた1日をのぞき、毎日忙しい中、顔を見に来てくれた病院勤務のNには感謝だ。
おかげで私はすっかりNに甘えまくった。集中治療室から出てきた私にNがゼリーを持ってきてくれたんだけど、私は起き上がることはもちろん、食べたり口をきいたりすることも面倒くさい。そこおいておいて、とNに伝えるがNはちゃんと名前を書いて共同冷蔵庫にゼリーをいれておいてくれた。
そのゼリーのおかげで私はすっかり食欲が戻り、出された食事をすぐに食べられるようになった。ありがとう!
そして、笑ったのが、毎日あれ買ってきて、これ買ってきてとお願いし、とある日にはアイスクリームを買ってきて、あとで銘柄を伝えるから、と言っていた時のこと。私が銘柄を伝える前に「昼休みの時に買っておきました」とNはドンピシャのアイスを買ってきておいてくれたのには笑ってしまった。
普段好きなアイスではないのだけれど、こういう時、誰かに買ってきてもらう時、病院とか特殊な環境にいる時、自分が食べたいのはそういうアイスだ。それを見事に当ててきたNはすごいな、と思った。
しかもNは私のことを心配しているだろうチームに野崎は無事だと連絡してくれたり、別の友人に知らせて病院前まで車を誘導してくれたり…。あぁ、当分Nには頭があがらんなぁ!
そして、もうすぐ退院というタイミングで、忙しい中きてくれたK子さんにも、私がハイパー元気すぎるのであきれられてしまった。っていうか、K子さんと話していると話が本当につきない。
さて予定通り退院できるのか、ひと悶着あったが、それでもなんとか予定通り金曜日に帰宅することができた。
帰宅した当日は元気だったのに、翌日は病院では痛くなかった傷口が妙にシクシクする。天気が悪いせいもあるのだろうけど、やっぱり辛い。
今日は、ケルト市でもおなじみ、Sunny Spellsの田村のの先生に来てもらって、スペシャルなお灸をしてもらった。こんなのを被って頭から循環がよくなるお灸。ちょっとオウムのなんかみたいなすごいビジュアルだけど、これが抜群に効くのよ。全身のすべてが循環していくのがわかる。
それにしても退院して車を出してくれた友人と話していて思ったのだけど、入院って最高の気分転換になる。気分転換って言ったら、不謹慎だけど。
普通、お金と暇がある人は海外旅行とかに行くのだろうけど、今や海外出張してもあまり気分転換にならない自分にとって、自分の人生のギアを整えるには、最高のチャンスでもあるのが入院だ。
全身麻酔の外科手術とはいえ、それほど深刻でないから、そんなことが言えるのだけど、塀の内側でいろいろ私も考えた。今までのこと。これからのこと。人生のギアがまたこの入院で変わったような気がする。
さて、それにしても今回、私の肺の中から取り出された例の怪しい部位は果たしてガンだったのか。実は今回はまだ結論が出ていないという…。
前回は取った瞬間「膵臓からの転移です」って感じだったのに。今回は待たされている。謎。でも今週早くも主治医2との問診が予定されているため、そこでは分かることになっている。
まぁ、ガンでなくてもいいんだけどね。これは取って検査する必要がある何かだったわけだから。
あと、この手術では管をぬいたあとの傷をホッチキスで止めるのだけれど(これについては本当にホッチキスとしか説明のしようがないんです。実際、がっちゃんがっちゃん言って止めるし)3ヶ所のうち、二つは退院前に抜糸完了!
このあと木曜日にまた主治医の問診があるのだけれど、そこで残っているホッチキス(笑)を抜いてもらえたら、お風呂もOKということになる。とはいえ、銭湯とサウナはまだやめておかないとダメだろうなぁ。激しい運動は、いつまでダメか先生に聞かないと。
また土手を早く走りたい。前回はブログなどの記述によると、4月に手術 → 6月に海外レコーディング(これが結構辛かったと記憶している) → 7月に北海道出張 → 戻り次第ランニングスタート… といったスケジュールでした。果たして今回は?
ちなみに今年は7月頭に1週間ほどの海外レコーディングの仕事が控えている。その後帰国してからクィヴィーンの公演といった段取りだ。
下の写真は病院の評判が悪いご飯。でもよく匂いをかいで、味わって食べてみると悪くないことがわかる。作ってくれた人、ありがとう。
ここの病院は院内でご飯を作っていることがよく知られていて、かつカトラリーは自分で持ち込むのがルール。家にあった金兵衛の割り箸にぴったり合うメニューだったので、気持ちだけでも金兵衛気分。もう外に出たのだし、また京橋にお弁当買いに行こう。
というわけで、みなさん、ご心配をおかけしました。
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THE MUSIC PLANTとしての次の公演は、こちら。
Caoimhín Ó Raghallaigh クイヴィーン・オ・ライラwith 黒木千波留
7月24日(木)南青山曼荼羅19:00開演
¥6,000(+ドリンクオーダー)
詳細はこちらへ
野崎は作曲家:日向敏文さんのマネジメントおよび宣伝をお手伝いしております。6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースになります。配信でもすぐ聴けるようになりますので、みなさんもぜひ。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。
民音さん主催でゴサードシスターズの来日ツアーもあります。詳細は特設ページへ。
ポール・ブレイディが12月にケルティック・クリスマスで来日します。詳細はこちらへ。