『望むのは死刑ですか オウム"大執行"と私 告白編』を見ました


例の「大執行」についてのドキュメンタリーということで、興味を惹かれ横浜まで見に行ってきました。

そして、なさけないことにまったく記憶のになかったのだけど、この監督の前の作品『望むのは死刑ですか』はちゃんと見に行ってたことを忘れてました。ここに感想が書いてあった

会場に行って「あ、あれの続編なんだ」と改めて認識。すみません。でも何度でもこのテーマであれば私は見たいと思うし、いろいろ知りたいと思う。ちゃんと見に行ってた過去の自分、ナイス(笑)

というわけで、見てきましたよ。『オウム大執行と私』

オウムの死刑囚たち、今から5年前、2018年7月6日に7名、7月26日に6名に死刑が執行された。これは今までにない圧倒的な数。これによって、永遠に解明できないこととも出てきてしまった。

麻原などは言動がおかしかったとはいえ、一審での死刑執行だった。これはちょっと異様な話だ。

このドキュメンタリーの内容は、この大執行直後、リアルにこれら死刑囚、被害者に関わった人たちの声を集めたもの。

それにしても。知れば知るほど信じられない「悪」の塊だったオウム真理教と麻原。そしてあきらかに「拉致」の証拠をつかみながらも坂本弁護士一家を「失踪」だと主張し続けた神奈川県警。

これも「悪」だ。ひどい「悪」。世の中にはこういう「悪」を遂行できるものがいるのだ。

被害者はとにかく救われない。何も知らない赤ちゃんまでも殺したオウム信者たち。麻原にあやつられていたとはいえ…都子さんは子供だけはと懇願したそうである。それを殺した。三人家族を六人がかりで殺した。

本当にリアルな友人である坂本さんを殺された友人の弁護士たちにはたまったもんじゃない。

映画では、今回の「大執行」について、4人の被害者たちの話が聞ける。

最初被害者として、オウムから子供たちを取り戻そうとする親の会を結成し30年、この件にずっと係り続けてきた永岡英子さん。夫は猛毒で襲撃され障害者となったそう。

彼女が解放しようとした子供たちの一部は被害者から加害者となり、それが死刑になる痛みを背負うこととなる。大執行においては「国に突然裏切られた」という気持ちになったと話す。

そして、二人目は後輩の坂本さんを「この件に巻き込んでしまった」と苦悩する岡田尚弁護士。岡田さんの話は本当によかった。

「国家が被害者にかわって殺すわけですよね。人間の感情問題と、制度というものの兼ね合い。システムがあるという、それを国家が行使するということについてはいかがなものかと思う。自分の憎いと言う気持ちと「システムとして国が変わって殺してあげますよ」というのが果たして良いのか」

岡田さんは以前からの死刑廃止論者として、苦悩していく。

それから麻原の弁護団12人のうちの一人である小川原優之弁護士。(今は日弁連の死刑廃止実現本部事務局長)の話もよかった。アメリカでは少なくとも死刑はすごく重い。スーパーデュープロセスと呼ばれるものがある。

なので、今回の麻原みたいに1審でそのまま執行されるというのはありえない。弁護人としては、せめてもっと時間をかけて事実をとことん争うべきなんだ、と。

最後が滝本太郎さん。坂本さんの失踪をきっかけにオウムと戦い、自らのもサリンガスで命を狙われている。麻原だけには死刑をと強く主張。

でもこの滝本さんの、麻原四女の話は、かなりグッときた。遺体に会い、四女が刑務官に「お世話になりました」と頭をさげた話。後ろにいた刑務官の人たちは泣いていたそうだ。そして部長は「ありがとうございます。みんなに伝えます、救われます」と言ったそうだ。

そんなふうに死刑はあるべきといいつつも、死刑制度は刑務官の人間らしくいること=人権にも侵食している、と話す。

そうそう江川紹子さんなんかも、実は死刑制度賛成派なんだよね(今はどうなんだろう)。

それにしても、被害者、そして被害者から加害者と見られた人たちの声は重い。また最後の岡田さんと滝本さんの対談にはとても心を揺さぶられた。

そして今回は上映終了後は岡田さんがリアルで登壇。岡田さんのお話もあり、ますます考えた。考えることが、まずは大事なのかな…と思いつつ、とにかく何もできないけれど、自分は自分の気持ちをブログで発信していこうと思った。

本当に考えてほしい死刑制度のことを。私のブログで一人でもそういうことを考えてくれたら、もうそれで嬉しい。

というわけで、私が死刑について書いた過去ブログはこちら。

EUのシンポジウムに行った。うわ…2012年だよ、これ。もう11年前。今読んでも良い。
和歌山カレー事件。これも本当にやばい。
TVタックル『死刑制度を考える』
木村草太さんと青木理さん。
刑務官が明かす「死刑のすべて」
佐藤大介さん「ルポ死刑」
その他、佐藤大介さん登場の動画など
村上春樹『約束された場所で』

というわけで、この映画、内容はとても重要で良かったのだが、ちょっと音声が聞き取りにくいのが残念だった。

今やYou Tubeの素人動画でも音は非常に良い。トークイベントの登壇者たちの発言も、配信をしているのかしてないのか、オンラインで拾っていないので、とにかく音声が非常に弱いし、最後の岡田さんの居酒屋での独白なども、周りの女性客の声がかぶっていて残念だった。

他にもまさかと思うがカメラのマイクで拾っているのか、質問者側の声がやたら大きく答える人の声が小さかったり。

他の低予算(失礼)ドキュメンタリー。他のインディーズのドキュメンタリー監督たちも概してそうなんだけど、最近の素人動画のクオリティの高さを眺めるにつけ、プロの人こそ、どちらかというと動画の綺麗さやアングルの斬新さと同時に音のクリアさを重視してほしいと思う。

映画は…というか動画で何かを伝える時、それがドキュメンタリーにおいても細部のこだわりや演出はとても重要なのだ。

すみません、余計な話でした。実際、こういう映画作るの予算的にも人員的にもとても大変だと思う。だけどあえてこんなことも書きました。監督、スタッフの皆さん、これからも頑張ってください! 期待しています。

 

というわけでぜひ見に行ってください。1時間ほどの長さで、短いのもいいです。『望むのは死刑ですか オウム"大執行"と私 告白編』 ホームページはこちらです。

こんなドキュメンタリーも発見。