なんかすごいもん観た…シャンタル・アケルマン監督『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080コメルス湖畔通り23番地』




すごいもん、観た。 友人がこの映画祭を宣伝していたので、どんなもんかと思い1作品見ることにした。監督の名前すらよくわかってない馬鹿者です、わたくす。

あと来年早々にかかえているプロジェクトで、フランス関係の情報を集めていることもあって、日仏学院にお邪魔したいと思っていたところだったのでした。

そもそもあそこが、新しくなってからまだ行けてないし、どんなもんかと思って見学しに行かなくちゃということで。

フランス、本当にいい。文化にお金をかけるのが正しいと証明してくれる国。今でこそ各国大使館結構文化的オープンスペース作っているけど、こういう場所(しかもとっても素敵なロケーション)を昔から持っている国はフランスしかない。

で、映画祭に行くにあたって友人に何がおすすめか訊ねてみたら、『ジャンヌ・ディエルマン〜』まだ観てないのは、かなりいけない。まずはそれを観ろ…という指令を受け(笑)土曜日出かけるの嫌いだったけど、ゴー! 

日仏。あいかわらず素敵な環境。森の中に建物があって、図書館や資料が揃っている。素敵なシェイクスピア書店改めパサージュ・リヴ・ゴーシュも。(私の神田の棚本屋の系列店なのです)店員さんも知ってる方で、しかも蚊取り線香置いてた(笑)。素敵すぎる。素敵な本屋。

今回の映画祭では監督とは幼い頃かの大親友で映画制作・会社運営のパートナーでもあったマリリン・ワトレさんのティーチインがあるということもあって、超人気の満席。早くチケット買っておいてよかった。

まずは日仏の新しいレストランを下見と称してランチをいただく。美味しかったけど、金額は結構するなぁ。しかも店に入って、実は映画見るので1時間しかないんですよとお伝えしたら、コースは時間的に無理かもとアドバイスされ、アラカルトで、帆立のなんちゃらオマール海老の泡々ソース的なものを注文。

死ぬほど美味しかった…


フロアのお兄さん、そしてシェフありがとう。次回はランチでも2時間半くらい時間を取ってうかがいます。そうよね、ここでは、みんなフランス人(笑)

そしていよいよ映画へ。長いと聞いてたけど、確かに長かった。固定カメラの、動かない長い長いショットが続く。ただただ料理をしているシーン、電気を消して廊下を渡って次の部屋へ。

電気をつけてお鍋をかけて。ピンポンとなる玄関へ出る。そこから男性を迎えるシーン、エレベーターのシーンなど。

エプロン(っていうか割烹着みたいなやつ)を着たり、タオルで手を拭いたりも。なかなかのルーティン。これに慣れると「さぁ、手を拭かなくちゃ」と自分でも思ってしまう不思議(笑)

そのほとんどのシーンが彼女の住んでいる室内だ。これが実に閉鎖的な彼女をよく表現している。時々街に出るショットもある。

赤ちゃんを預かり、息子を起こし、ご飯を食べさせ…彼女のルーティンのような生活が延々と描かれる。

最後の方になると、そこにちょっとした綻びが出始め…お気に入りの妹からもらったコートのボタンを繕おうと、手芸店を回っても海外品だということもあって見つけられなかったりとか、ささいなこと… ささいな不都合。綻び。

そして彼女はある意味キレる。いや、もしかしたらあれは、ある意味「解放」なのかもしれない。とにかく意外な結末が待っている。そして…。最後の最後は、まったりとしたシーンで終わる。



音楽もなければ、セリフも最小限。ただ彼女が空気を入れ替えるために部屋の窓をあけると街の雑踏のような自然音が聞こえたり、部屋に差し込む光も自然だったりもする。

女性の監督が女性のスタッフだけで作ったのだそうだ。そしてこの作品の主演女優のデルフィーユ・セリッグは、思い立ち、カメラの反対側に回ることを選び、この作品を作る。(やっと繋がった! 自分の中のフランス/ベルギー感!)

すごいな。ものすごい作品だと思う。だって、これ1975年の作品ですよ。200分もある長尺だけど、なんか引き込まれて、普段、映画って1時間経過すると時計を見てしまう私が、一度も時計を見ないで3時間集中。なんか没頭させる作品だった。

なんていうんだろ、ちょっというとポストクラシカルの音楽みたいな。循環に耐えてこその、その向こうに待っている爽快感みたいな? カタルシス?

でもこの映画、たくさんのことを伝えていると思う。あまり上映のチャンスはないのかもだし、配信にも載ってないようだけど、どこかで見かけたらぜひ観てほしい。監督の他の作品も見てみようかな…

トークでは、彼女と本当に幼馴染だったというマリリンさんによる楽しいエピソードが披露されて、私のような初心者では恐縮してしまうようなテンションのお客様たちに囲まれて、彼女も嬉しそうだった。

マリリンさんと監督が出会った学校は、氏名が胸に刺繍されているような厳しい学校で、二人は昼休みに学校を飛び出して映画を見に行ったりしていたとか。ゴダールの「気狂いピエロ」とかをそこで初めてみて圧倒されたとか…

そして女だけのチームって、こうなのよ的な笑い話もあり。でも分かる、分かる。私も還暦すぎて時間が出来た女友達で集まってなんかやりたい!と思ったりしている。それが若くてパワーがあるころならなおさらだ。

マリリンさんが言っていたのは、監督をはじめ実は「現場女子」は本当に映画業界にいなかったそう。例えば編集などポストプロダクションには数名いたそうだけど、撮影の現場には本当にいなかった。

で、「そういう意味では全員素人」「だからこそプロ女優である彼女に集中できたのかも」とこの作品を評価しているのが面白かった。なるほどねぇ…

再来週には、この映画のメイキングのフィルムの上映もあるんだけど、来週は某トークイベントに申し込んじゃったんだよな。でもあっちには欠席届を出して、こっちを見ようか…。

しかし最近ほんとに思うんだけど、東京に住んでいることのメリットはすごい。文化イベントたくさんあって、本当に楽しいし、勉強したければ、いくらでも「沼」はある。家賃高くても、当分がんばりたいよなぁと思う。


シャンタル・アケルマン映画祭2026。詳細はこちら。

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◎96年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろし、公式サイトは近日中にアーカイブ化予定。自分の主催公演や招聘はもうやりませんが、2026年も若干の雇われ案件があるので、そちらはゆっくりとやっていきます。

◎10月31日(土)のこちらのイベントの制作をお手伝いしています。大田区民プラザにて「ケルト・ハロウィン・フェスティバル」メインはO'JIZOのコンサート。CDも発売になるよ! 詳細はこちらへ。


◎よく聞かれるので、ここに載せておこう。最近観た中でベストな映画はこれ。ベストな本はこれです。

◎ノルウェーのフォルデ・フェスティバルに行ってきました。そのフォルデのレポートをONTOMO Webに載せていただきました。Tower Records MIKIKIにも。ありがとうございます。

◎アイルランドでメアリー・ブラックのラストコンサートを見てきました。レポートはこちら。セットリストをプレイリストにしました。

◎アイルランドでポール・ブレイディの3夜連続公演を見ました。レポートはこちら。最終日の様子はここ。セットリストをプレイリストにしました。

◎現在CDの販売は終了してますが、書籍はあいかわらず販売中。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。

◎神保町すずらん通りのパサージュにてケルト書房という棚を運営しております。ケルト関係の書籍や友人の書籍などを販売中。こちらへどうぞ。

◎最近、こんな応援記事を書きました。ぺッテリ・サリオラの来日記念盤@Intoxicate

◎ケルティッククリスマス2026、発表になりました。今年はアルタンとソーラスが来日。詳細は公式サイトへ。

◎あいかわらず無印良品BGMの仕事はしております。この4月27日より昨年録音にかかわったデンマーク編が配信スタートしております。良かったら、聴いてください。店頭ではすでにその2週間くらい前から流れているようですが、結構まだBGM29のスコットランドもたくさん流れますね(のざき調査による)。

 

◎パンデミック後くらいから作曲家:日向敏文さんのお手伝いしております。昨年の6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースされました。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中。


◎その日向さんは、91年の大ヒットドラマ『東京ラブ・ストーリー』のサントラを手掛けていたわけですが、そちらが35周年記念のリイシューされることになりました。詳細はこちら。 最新インタビューをotonanoにて連載中! さらに今まで配信されていなかった『アナザー・グラフィティ』『妹よ』『陽のあたる場所』『愛という名のもとに』『ええにょぼ』も3月25日より配信スタートしております。

◎また「Two Menuets」がこの5月25日よりGucciのキャンペーン「The Original Sinner」で使用されています。改めて聞くと良い曲!  Gucciのキャンペーンサイトはこちら。