ジェーン・スー『介護未満の父に起きたこと』を読みました


なるほど噂にたがわず、これは名著ですな。あっという間に読めます。なにせ新書ですからハードルが低い。文章もうまい、スーさん、最高。

いや、私も現在、親のことで悩みまくりです。大学進学のために家を出て以来、親とは生活してないし、もう一緒に住むのは絶対に無理。ありがたいことに向こうもそう思ってくれているのですが、残念なことに親は歳をとる。私も歳をとる。一応、長女ともなれば、やることもある。

しっかり者の妹が、近所で家庭を持っているため、親に孫の顔も見せてあげられているし(妹よ、本当によくやった! ありがとう)、両親にとっては、まずまずの老後なんじゃないでしょうか。

父親が今、93…あれ4だったかな、そして母親が86だか87だか。娘がガンになったというのに、二人とも元気なのだから、まぁ、大変だ。

今年1月に父親が倒れてから(と言っても、今はピンピンして畑もやってるのだからすごい)、週に一度は、実家(といっても東京駅から特急で50分ほど)へ帰るようにしているのですが、毎回毎回、6時間くらいを実家で過ごし、親と喧嘩しないで帰宅するのが、本当に至難の業。

そんな私の愚痴を、先日某映画配給会社のK先輩に聞いていただいたところ、この本を推薦されたのでした。実は、この本、普通に話題になっているから、普通に購入し、その後ずっと積読になっちゃってたのですが、先輩に推薦され、早速積読山から救出。開いて読んでみました。

…で、あっという間に読めちゃった。新書だから早いのは当然だけど3時間くらい? 

スーさん、すごい。彼女、ラジオもポッドキャストも最高に楽しいけど、本もすごい面白い。彼女、もともとレコード会社勤務だったんだよね。どこのメーカーだったんだろう。とにかく面白い。っていうか、本当に頭がいいんだろうなって思う。

K先輩も「百万回膝を打つ」って書いてたけど、まさに、ほんとだよな。なんだろう、問題解決のプロなのかもしれない、スーさんは。

親の生活がいよいよ危ういということを知った時、数ある介護本ではなく、ビジネス書コーナーに向かったというスーさん。そこで開眼。まず向かうべき目標を具体的に書き出す。そしてそこから逆算して、今やるべきことを計算していく。この件りは、とにかくスリリング。

物をぱっぱと捨てられない親に対しては、いったん視界からそれらの物を退かす…とか。(そして、執着が切れたところで、こっそり処分。ナイス!)

喧嘩になりそうな親はミック・ジャガーだと思え、と。そして自分は敏腕コンサートプロモーター。頑張って彼をステージに乗せるまで、付き合わないといけない。そう思え、と。

スーさん、そんなふうに、メタ認知というか、なんでも客観的に見て行動できるのが素晴らしい。自分の実行したことの中から上手くいったこと、ダメだったことなどを、ちゃんと整理できているのが素晴らしい。いや、実際、それだけで、すでにすべては解決に向かっているのだから。

もちろん失敗の数も半端ない。でもトライ&エラーで、なんとかなっていく。そしてお父さんも素晴らしいよ。うちの親は、そもそもインターネットはすべてNG。っていうか、やってみればいいのに。昔のドラマとか見れば面白いと思うよ…と言っても、全然ダメ。

そして気がつくのだ。人間、新しいことをやるというのは本当にハードルが高いということに。80過ぎたら、ほぼ新しいことはできなくなっていくと思っていい。

そしてスーさんの作戦の中で、素晴らしいと思ったのが、例えば毎月の墓参り。同じ場所、同じ状況で、同じテンプレで会うことで、新しい決め事がないから、喧嘩や揉め事は少なくなるし(そうなんだ、違う時間、違う場所で待ち合わせってこと自体、もう年寄りには無理なのだ)、自分も親の毎月のちょっとした変化にも敏感に気づけるようになる、と。

こういう親の変化を微妙に感じ取り、それがひどくならないうちに上手に対応していく。いや、ほんとうに素晴らしい。突き放しているようで、しっかりお父さんのことを見守っている。愛情もある。うん、これでいいと思う。参考になる。これなら自分もできるかな、って思う。

そして最後のところでは、自分自身のことも書いている。自分には子供がいない。一方、お父さんは、それでも友人が多く、女性の影もあり(しかしそこには娘といえども介入しない)なんとか社会性を保っている。

そして、そのコツはなんだろう…と。そのコツは、歳をとっても身綺麗に清潔感があること(ほんとオシャレなお父様)、そして若い人に上からマウントしないこと、とある。なるほど納得。

確かに若い人から相手にされなくなったら、もう終わりだ。終わり。

うーん、私も本当に心配だ。自分はちゃんと可愛いお年寄りになれるのだろうか。今でもついつい親しい友人に、わがままを言ってしまったりすることがあるのではないか。

それにしても、この辺の「介護未満の親」と言うのが、一番難しい時期なのかもしれない。施設に入れば、それはそれである意味、一つのゴールではあるのだから。

そういや、近所に老人ホームができたので、どんなもんなのかなぁ、と思いつつ、親のこともあってから、見学に行ったのだが、いやー 200人くらいのおじいちゃんおばあちゃんがホールで同時にご飯を食べている絵面は圧巻であった。

案内してくれたのは所長さん。私みたいな半分野次馬でも、それが大事な営業活動だから、だいたいこういうところの下見での説明は、一番偉い所長さんが自ら行ってくれる。

そして言う、「私たちは口腔ケアにもとても気を使ってるんです。でも、今、遅れて入ってきたおじいちゃんいたでしょ? 彼は食事前にあれこれ指導されるのがいやだから、わざと遅れてくるんですよ」と教えてくれたり…

つまり、このホームが「それなりにジェネラスにやってますよ」「片目はつぶっていたり」というところだというのをさりげなくアピールするわけだ。所長さん、できるなぁ!

なるほどねぇ…。でもこういう場所に入ってしまったら、家族がお迎えに行かなければ、ずっと外出NGだ。そのほか、危険なことはできないから、自由度は相当に制限されてしまう。安全度はあがるのだろうけど。

まぁ、でも私が仕事がんばってた30年。親に何もなかったから、自由にのびのび仕事できたのも事実で、それにはとても感謝している。これが異様に早く介護が始まったり、具合が悪くなられたりしたら、おちおち海外にもいけないし、私は今、手にしている生活はできていないかもしれない。

スーさんは、実際ラジオでも本でも売れっ子で仕事は成功していると言えるだろう。だから大抵のことはお金で解決していくわけだけど、一方で、吉本ばななさんみたいな例もある。

そして、こういった金銭的なサポートを親にしてあげられるのも、彼女みたいに売れっ子だからというのはある一方で、彼女がしっかり働かないとお父さんの生活も危うくなってしまうわけだ。二人で倒れてしまうことになる。そのプレッシャーたるや…

そういや先日、自宅に遊びに来てくれた友人は、ファイナンシャルプランナーの資格を持っていて、本当に頭が良い人なのだが、彼女は親を扶養家族にするべく(そうすると税金が優遇されるらしい)、あまり大きな金額ではないが、親に送金してあげているそうなのだ。

偉い、偉すぎる。そういう知っているべき常識を私は全然知らない。

それにしても、話は本に戻るが、本というのはほんとうに素晴らしいと思う。こうやって先陣を切っている先輩がいることで、あとに続くものには非常に参考になる話がいっぱいだからだ。

先日、実家に帰ったら母親がまたあれこれ言うので、本で読んだ知識を駆使し、ピシャリと論破してやった。

でもスーさんの本を読んで、ちょっと反省。これって根本解決にはなってない。これじゃ、わたし、ひろゆきの論破みたいなことになってる?…とふと気づく。

あぁ、ほんと親のことも恐怖だが、自分のことも恐怖だ。可愛くない老人にはなりたくないと常々思う。親も親で「早くお迎えが来ないかしら」とか言っているが、本音のところはどうなんだろう。

自分がそろそろ死ぬのだろうと思いつつ、次のアメリカ選挙までは見届けたいとか、高市政権が今後どうなるのかは知りたいとか思ったりするのかな。

そして、長生きはする必要はまったくないのだが、最後まで可愛い老人でいるには、どうしたらいいんだろうと悩む。実際、歳をとってすっかり性格が横暴になり、もう一緒に飲食店に行くのは勘弁したいと思っている年上の友人が、何人かいたりもする。

本当に難しいし、未来が怖い。だからこそ、せめて元気でいる間は、人の役に立とうと日々努力をしようと思ったりしている。


◎96年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろし、公式サイトは近日中にアーカイブ化予定。自分の主催公演や招聘はもうやりませんが、2026年も若干の雇われ案件があるので、そちらはゆっくりとやっていきます。

◎10月31日(土)のこちらのイベントの制作をお手伝いしています。大田区民プラザにて「ケルト・ハロウィン・フェスティバル」メインはO'JIZOのコンサート。CDも発売になるよ!

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そのピーターさん、音楽映画の本も出ますよ。こちらに詳細を載せました

◎よく聞かれるので、ここに載せておこう。最近観た中でベストな映画はこれベストな本はこれです。

◎ノルウェーのフォルデ・フェスティバルに行ってきました。そのフォルデのレポートをONTOMO Webに載せていただきました。Tower Records MIKIKIにも。ありがとうございます。

◎アイルランドでメアリー・ブラックのラストコンサートを見てきました。レポートはこちら。セットリストをプレイリストにしました。

◎アイルランドでポール・ブレイディの3夜連続公演を見ました。レポートはこちら。最終日の様子はここ。セットリストをプレイリストにしました。

◎ドーナル・ラニーのドキュメンタリー『In Time』。自分の感想。出てきたアーティストの紹介。Frank Harte / Zoe Conway / Méabh Ní Bheaglaioch / Seosamh Mac Grianna。また関連楽曲を集めたプレイリストを作りました。楽曲解説も書いたよ

◎現在CDの販売は終了してますが、書籍はあいかわらず販売中。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。

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◎最近、こんな応援記事を書きました。ぺッテリ・サリオラの来日記念盤@Intoxicate

◎ケルティッククリスマス2026、発表になりました。今年はアルタンとソーラスが来日。詳細は公式サイトへ。

◎あいかわらず無印良品BGMの仕事はしております。この4月27日より昨年録音にかかわったデンマーク編が配信スタートしております。良かったら、聴いてください。店頭ではすでにその2週間くらい前から流れているようですが、結構まだBGM29のスコットランドもたくさん流れますね(のざき調査による)。

 

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◎その日向さんは、91年の大ヒットドラマ『東京ラブ・ストーリー』のサントラを手掛けていたわけですが、そちらが35周年記念のリイシューされることになりました。詳細はこちら。 最新インタビューをotonanoにて連載中! さらに今まで配信されていなかった『アナザー・グラフィティ』『妹よ』『陽のあたる場所』『愛という名のもとに』『ええにょぼ』も3月25日より配信スタートしております

◎また「Two Menuets」がこの5月25日よりGucciのキャンペーン「The Original Sinner」で使用されています。改めて聞くと良い曲!  Gucciのキャンペーンサイトはこちら