ドーナルのドキュメンタリーで最初と最後にゲール語の詩が朗読されますが、それはなんだろうと思った方も多いと思います。
Seosamh MacGrianna(ショーサフ・マックグリアナ…でいいのかな)は、1900年もしくは1901年にドニゴールに生まれたUlsterを代表する詩人で、ドーナルのドキュメンタリー『In Time』で朗読された彼の詩「Mo Bhealach Féin」は、伝統歌「Cór Thaobh a' Leithid」としても、とても有名なのだそうです。
旅や人生の道のりを美しく表現している作品として良く知られています。こちらはその「Cór Thaobh a' Leithid」を取り上げているドキュメンタリー映像? クオリティが悪いですが、ドーナルが出てきます。
マックグリアナの人生は苦しさに満ちたものだったようです。最近になるまでアイルランドでも彼を知る人はあまり多くはなく、代表作「Mo Bhealach Féin(The Road of Mine)」が英語に訳されるまで100年ほどの時間を要しました。
彼はまだ大飢饉の記憶が残る時代にドニゴールに生まれました。彼の家系は文学の才能に満ちており、お爺さんは大変有名なストーリーテラーだったそう。
アイルランド独立戦争に参加し、内戦中にはIRAのメンバーとして抑留され、そのことが理由で釈放後も常勤の仕事を見つけるのに苦労したそうです。
またゲール語地域の変わりようや、英国化されたアイルランドに批判的になり、1930年以降は創作のパワーも衰え、貧困や精神的な問題に悩む日々が続きます。35年には「泉は枯れた」「もう書くことはない」「もうどうでもいい」と、未完の小説に記していたそうです。
しかし彼が当時もっとも偉大なゲール語の作家であることは間違いありません。実際、英語で書くことも可能だったのにもかかわらず、あえてアイルランド語で書くことを彼は選び続けました。
当時から「商業的価値はまったくない」とされたアイルランド語。上流社会ではめったに話題にのぼらず、万が一話題になったとしても、それは貧しいもの、もっとも周縁に追いやられ毛別されたものたちの言語とされてきました。それを使うことは恥ずかしいことだとされていたわけです。
でもってさらに重要なことは、彼はアイルランド語を用いて、新しい現代的な表現を確立したことにあります。その功績は英語におけるオーウェルやベケットにも匹敵するといわれています。
彼は、自らを「体制」や「システム」の「アウトサイダー」と見なしており、当然のことながら、人生の道のりで出会った自分と同じ境遇にある人々に惹かれていきます。
パートナーと一緒になるものの、しかしそのパートナーは結婚歴があったため(当時のアイルランドでは離婚・再婚が許されていない)最終的に彼女が自殺してしまうと、息子の溺死にも見舞われ、彼は重度のうつ病を患います。
その後、レターケニーにあった精神病院に入院し、統合失調症と診断され、31年間すごしたあと1990年に亡くなったのだそうです。
マックグリアナは、ドーナルのお母さんと出身地が一緒。ドーナルは子供のころ、夏を過ごしたドニゴールに、本当に心を寄せていることがわかります。
ちなみにマックグリアナのこの作品は独立した詩ではなく、1940年に彼が発表した自伝的小説『Mo Bhealach Féin(私の行く道)』の冒頭の一節ということらしい。
というわけで、映画で使われている部分を紹介します。すみません、訳は私がやりました。映画ではもっとちゃんとした訳になっていると思いますが、とりあえず。間違いなど発見したら、詳しい方、ご指摘願います。
<オープニング部分>
An Bealach Cas Geal 輝く曲がりくねった道
僕がまだ若かったころ
僕の目の前に広がっているそれを見た
その道に従って進みたいと思っていた道
輝く曲がりくねった道
山間の傾斜面
歌の中で祝福されたどんな山よりも美しい
世界中のすべての息を超えるように
囁くような流れにかかる古い橋と
水を超えるワインのように
思い出せるかぎり午後遅くから早朝にかけて
白く点在するいくつかの町
そして、そこに生える生き生きとした
植物や茎のひとつひとつが
はっきりと見分けられるようになるまで
座っていられるやすらぎの場所
人里離れた魅惑的な岬
フィン川のほとり、波打ち際で
海の上の船たちを眺めながら
戻ることのできない道、心配と恐怖の間を縫う
移ろいやすいその道
私がその道を歩いたことがないと言う者がいるのだろうか
私はゲール語の詩人の王
この20世紀、復興の時代において
<エンディング部分>
そして私の進むべき道は今も私の前に広がる
その道は、この家の屋根の端を回り込み
夜の木々の間を通り抜け
頭上には3月の脅威が迫る
その背後には、世界の果てまで山が連なり
その前には船乗りたちを守る守護者が立ち
正午から夜明けまで
光のつるぎで闇を打ち砕く
私が今座っているこの家には
Liam O' Flaitheartaがしばらく住んでいた
そしてPadraig O'Conaireもここを訪れ
ダブリンに向かって死を迎える直前に、ここで語り合った
この家を借りるまで、私はそれを知らずにいた
次にどんな場所へ辿り着くかはわからないけれど
思いもよらないうちに、
そうした驚異が私の元にやってくることは分かる
人生はそれを理解する心を持つ者にとって詩に満ちており
その泉は決して枯れることはない
そして私が生きている限り
私はゲール人たちにこの泉への道を案内し続けるだろう
アイルランドの小説家。20世紀初頭を代表する社会主義者。
英語ではリアム・オフラハティ
20世紀を代表するアイルランド語文学の一人者。
退院したら英語版ゲットしてちゃんと読もう!
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◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろし、公式サイトは近日中にアーカイブ化予定。自分の主催公演や招聘はもうやりませんが、2026年も若干の雇われ案件があるので、そちらはゆっくりとやっていきます。
◎よく聞かれるので、ここに載せておこう。最近観た中でベストな映画はこれ。ベストな本はこれです。
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