#pbmff レポート12 『イン・タイム ドーナル・ラニー』を観ました

In Time: Donal Lunny

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このドキュメンタリーの感想。私は昨年のアイルランド映画祭から、スクリーンで見るのも三度目なので、思うところはたくさんありますが、今回すクリーンで3度目を見て、本当に自然音が綺麗だなと思いました。

鳥の鳴き声、風の音、風になびく木々の音、雨(雹?)が降って来る時の音…

そういった音をドーナルは、まず「聴く」。ドーナルの音楽そのものが「聴く」ことから始まっていく。そして、そのメロディが欲しているものを与えていく…というのが彼の音楽の立ち位置なのだということを、再び確信しました。

ドーナルが伝統音楽に関わり始めた時、いわゆるパブのセッションでの伴奏楽器はドーナルだけだった。だから自由にやることができた、とドーナルは映画の中で語っています。まさにアイルランド音楽が必要とした男。それがドーナル・ラニーだったと言えるでしょう。

私にとってはドーナルはアイルランド音楽をかっこよくした張本人だと思っています。たぶんドーナルがいなかったら、私はアイルランド音楽をかっこいいとは思わなかったと思います。

このドキュメンタリーに対する私の感想…というか、私なりの解説文はこちらへ。

 

公式のサウンドトラックがないので、関連楽曲を集めてプレイリストを作りました。

この選曲の解説(というか言い訳・笑)をここに書きました。よかったら、聞いて読んでみてください。

さてさて、そんなわけで、Peter Barakan's Music Film Festivalでも上映が決まったこの作品。山口洋先輩と、この映画を一緒に見ることになり、とても嬉しかったですね。

たまたまなんですが、この映画を山口さんが見たいと話していたのは知っていたので、今度また音楽映画祭で上映がありますよ、とご案内したら…

「26日だったら行けるかも?」となり、であれば…ということで、トークを急遽お願いしたのでした。

きっと山口さんのことだから、本当はあれもこれもでいそがしいところを無理やり調整して来てくれたに決まっているのです。本当にありがとうございました。

トークゲストに公式に決まったので、事務局の人に事前の視聴リンクを送ってもらうことも可能だったのですが「事前にご覧になりますか?」というこちらの質問に山口さんは「いや、みんなと一緒に見るからいい」と返事してくる…  カッコ良すぎるでしょ、さすがヒロシ。

それはさておき、そんなわけで、今回の上映のあと、山口さんとピーターさんのトークが始まりました。

以下、私がメモったことなので(録音もしてません)、間違ってたり、誤解があったら、ぜひ皆さんのご指摘をお願いいたします。あくまで毎度のごとく文責:のざきでお願いします。

山口さん、先ほども書いた通り、あえて事前に見ないでお客さんと一緒に見てくれました。とにかく音楽を一緒にやったり、ドーナルは自分にとって人生の先輩であると話してくれました。とにかく緻密に音楽を作る人。料理も上手い、と(笑)

そんなドーナルにも一度だけ怒られたことがあるそうで、それは山口さんがメジャーから契約を切られた時。

「もうレコード会社の契約がない」とか話したら、契約は向こうからお願いされてやるもんだ。そんなことより、今、自分がお前にしているように、次のジェネレーションがお前のところに必ず来る。その時、面倒くさがってはいけない、話を聞いてやれ、と。

ドーナルもまた先陣から受け取っただろうものを、僕もドーナルから受け取った、と話されていたのが印象的でした。

ピーターさんにドーナルのプロデュースの仕方とかどうでしたか?と聞かれ、山口さんの答えは「ものすごく緻密」とひと言。

「ドーナル、スティーリー・ダンとか好きでしょ?」と聴くと「イエス!」と。「ドーナル、チャーリー・ワッツとか嫌いでしょ?」と聴くと「イエス!」(笑)

僕は逆なので、笑っちゃいました、と。

例えばドーナルはマッシュポテトを作る時も、すごく緻密(笑)。まずは芋を選ぶところから始まる。いい加減に選ばない。スーパーに行って、ポテトをひとつひとつ手に取って選ぶ。これはダメ、これはOK、と。

マッシャーもこれじゃないとダメだというのがあり、そのお下がりをいただきました、と山口さん(笑)すごいこだわり。

でも同時にインプロもできる。クールフィンのメンバーなどはものすごいメンバーで、譜面もなく1、2で録ってもう終わり、という。嫌味なくらい上手くてびっくり。

そのあとは、もう緻密なミックスですよ。僕のトラックとか多重録音する時なんかはヴォリュームを調整する一番大きなフェーダーの前に座って、ちょとずつ動かしたりしてフローを作る。とにかく細かい。そのフローに対して演奏していく…という手法は彼だけでしたね、と。

あと音楽としてリズムの解釈もものすごい。映画の中でも言っていたけど、と。

ピーターさんは96年だったかの「Common Ground」のアルバムまでドーナルのことをよく知らなかったそうですが、山口さんは、その前からかなり知っていたそうです。

山口さんにとってのアイルランド音楽への入り口は88年に出たチーフタンズとヴァン・モリソンのIrish Heart Beat(名盤!)。90年代の初期にニューヨークに滞在していたころ、仲良くなる連中が全員アイリッシュ系で、彼らに行けと言われて行ったのがアイルランド。

しかもエア・リンガス(アイルランド航空)に乗ってシャノン空港へ行け、と言われた。そしたらスチュワードがすでにいっぱい飲んでいたり、すでに飛行機の中がアイルランドだった(笑)

ここで山口さんから現在のドーナルの様子についてお話しがあり、まさにこの日アイルランドではフランク・ハート(映画の中でアカペラで歌ってた元気のいいおじいちゃんですね)の小さなフェスがあり、そこで今夜も演奏するそうですよ、と。

この映画の終わりでは点滴の後とかが痛々しいですが…と。ドーナル、本当によかった、元気になって。

このドキュメンタリー、モノクロで色彩がないから、自分の色で見られるというのはある。後半は見るに耐えない感じだけど、清濁合わせ飲むというか、いいことも悪いことも教えてくれる人ではある。

言う必要のないプライベートをさらすことも、今になってなんで…と思う部分もあるけど、何か意図があるのだろうと思う、と山口さん。とにかく一人の人間としてのメッセージをこの映画は送ってくれるので、あとは僕らそれぞれで受け取れば、と。

それにしても息子さん(シェーン)はシネイドにもそっくり。女の人についてはいろいろあったのかな、きっともてたんでしょうね、というピーターさんの言葉に、

山口さん、僕も聞いたことがあるのですが、その時の彼の答えは「そこに山があったら登りたいだろ」と言っていたと。「これ以上は言えません。察してください」(会場爆笑)

とにかくドーナルは伴奏者として最高だった。彼があらわれるまで伝統音楽は歌も無伴奏だし、(ケイリーバンドなどをのぞき)伴奏がなかった。そういうものだった。そこにブズーキを持ってきたというのがやはりすごいですね、とピーターさん。

山口さんいわく、ドーナルはベース(低音)が嫌いなんですよ、と(確かにクールフィンにはベースがいなかった! HEATWAVEもそういやそうだ)ブズーキはギターに比べて低音が明確でなく透明だから、そこにバウロンが入って、めっちゃハマる瞬間もあったり…

あとギリシャのブズーキをフラットバックにしたのはアンディとドーナルだけど、それを日本に持ち込んでYAIRIのブズーキを作ったのは、山口洋の功績で、それをドーナルも使っているんですよ、とのこと。嬉しいですよね!

アイルランドは不思議な場所で、山口さんの良く行くドニゴールの村(?)には「職業:詩人」と言う人がいるんだそうで、「昼間は彼は海藻を食べているんです」とのこと(笑)そして夜はパブでギネスを人々に奢ってもらう。

文化に対する扱いが全然違う。生活に溶け込んでいる。肉屋や八百屋があるように、彼の詩も生活に、村に必要なものなんですね、と。

プランクシティがドイツで受けたと言う話は面白いですね、とピーターさん。当時ピンク・フロイド、ドアーズと並んでた、というのもすごいんだけど、とにかくアイルランド音楽の存在そのものが革新的だった。

それを好きになった人たちが、今度自国の伝統にも目が行った、ということなんでしょう。ワールドミュージックの台頭は80年から90年代なんだけど、ビルボードのワールドミュージックチャートなどは半分くらいアイリッシュだったりもしていた。まぁ、アメリカ人にとって特別というのはあったのかだけど。

本当にチーフタンズとドーナル・ラニーは、アイルランド音楽の両輪といった存在でしたね、と山口さんも頷いていました。

いやー 山口さん、ピーターさん、本当にありがとうございました。

山口さんとピーターさん、お二人の写真を撮らなかったので、公式投稿からご紹介します。山口さんを呼んでくれた事務局の皆さん、本当にありがとうございました。


さて、この映画、まだ30日にもう一度上映があります。私はもう一回見るつもり。B5にいますから(私のバラカン映画祭の定位置)、質問などある人は私が知っていることなら出来る限り答えますので、ぜひご覧になってください。平日だけど、ぜひ。

たぶん字幕付きで見れるのは、これが最後になるかもしれません。チケットはこちらから。

そしてヒロシ先輩のブログも来た。ありがとう、先輩。

 ★

◎96年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろし、公式サイトは近日中にアーカイブ化予定。自分の主催公演や招聘はもうやりませんが、2026年も若干の雇われ案件があるので、そちらはゆっくりとやっていきます。

◎10月31日(土)のこちらのイベントの制作をお手伝いしています。大田区民プラザにて「ケルト・ハロウィン・フェスティバル」メインはO'JIZOのコンサート。CDも発売になるよ! 詳細はこちらへ。


◎ピーター・バラカンさんの音楽映画祭の応援団やってます! 今回も充実の内容。公式ページはこちら。



◎そのピーターさん、音楽映画の本も出ますよ。こちらに詳細を載せました。

◎ドーナル・ラニーのドキュメンタリー『In Time』。自分の感想。出てきたアーティストの紹介。Frank Harte / Zoe Conway / Méabh Ní Bheaglaioch / Seosamh Mac Grianna。また関連楽曲を集めたプレイリストを作りました。楽曲解説も書いたよ。

◎よく聞かれるので、ここに載せておこう。最近観た中でベストな映画洋画部門はこれ。日本映画部門はこれ。ベストな本はこれです。

◎ノルウェーのフォルデ・フェスティバルに行ってきました。そのフォルデのレポートをONTOMO Webに載せていただきました。Tower Records MIKIKIにも。ありがとうございます。

◎アイルランドでメアリー・ブラックのラストコンサートを見てきました。レポートはこちら。セットリストをプレイリストにしました。

◎アイルランドでポール・ブレイディの3夜連続公演を見ました。レポートはこちら。最終日の様子はここ。セットリストをプレイリストにしました。

◎現在CDの販売は終了してますが、書籍はあいかわらず販売中。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。

◎神保町すずらん通りのパサージュにてケルト書房という棚を運営しております。ケルト関係の書籍や友人の書籍などを販売中。こちらへどうぞ。

◎最近、こんな応援記事を書きました。ぺッテリ・サリオラの来日記念盤@Intoxicate

◎ケルティッククリスマス2026、発表になりました。今年はアルタンとソーラスが来日。詳細は公式サイトへ。

◎あいかわらず無印良品BGMの仕事はしております。この4月27日より昨年録音にかかわったデンマーク編が配信スタートしております。良かったら、聴いてください。店頭ではすでにその2週間くらい前から流れているようですが、結構まだBGM29のスコットランドもたくさん流れますね(のざき調査による)。

 

◎パンデミック後くらいから作曲家:日向敏文さんのお手伝いしております。昨年の6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースされました。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中。


◎その日向さんは、91年の大ヒットドラマ『東京ラブ・ストーリー』のサントラを手掛けていたわけですが、そちらが35周年記念のリイシューされることになりました。詳細はこちら。 最新インタビューをotonanoにて連載中! さらに今まで配信されていなかった『アナザー・グラフィティ』『妹よ』『陽のあたる場所』『愛という名のもとに』『ええにょぼ』も3月25日より配信スタートしております。

◎また「Two Menuets」がこの5月25日よりGucciのキャンペーン「The Original Sinner」で使用されています。改めて聞くと良い曲!  Gucciのキャンペーンサイトはこちら。