日本史が苦手である。普通の社会人なら分かっているべきことも、まったくもって、分かっていない情けない自分。
高校の時に勉強をサボったのが原因なのだが、ほぼ常識的なことすら知らない私が、なぜこの本を買ったのかというと、実は飯村さんのことをリアルに存じ上げているからだ。
なので、この本の感想を読んでいただく前に、この事件について、まずはぜひ皆さんに知ってもらいたい。
そして、事件を見守る私の中に、「飯村さんの側に味方したい」というバイアスはあるかもしれないことは、はっきりと最初に書いておく。
が、それを棚の上に置いたとしても、やっぱり黙っておれないという思いで、自分のブログに飯村さんの本の感想を書く。
まずこの件を全く知らない人はこちらの動画をどうぞ。2分ほどのニュース動画です。
まぁ、この事件、今のところ多くのメディアではこんなふうに報道されているわけですが、この本を読めばわかる。とてもじゃないけどNHKは「誠心誠意対応した」とは言えない。
だからぜひ、私はこの本を読んでもらいたい。事件ってなんでもそうだけど、ニュースで流れるのはほんの一部。でもそれは仕方ない。ニュースってそういう物だから。だから深く知りたい人は、ぜひ本を読んでもらいたいのだ。
この本。まず手にして、一瞬、これは難しくて読めないかも…という心配はあった。何せ日本史わかってない、馬鹿なわたくす… まったくいい年をして情けない…とほほほほ…。60歳にもなるのに自分の国のことをろくすっぽ知らないなんて。
ところが! 実際は、驚いたことに、この本、すごくスイスイ読めてしまった!! なので表紙の写真を見て「現代史かぁ〜」「難しい本かも…」と敬遠する必要はまったくない。この本が出た経緯は飯村さんにとっては悲しいことだけれど、これはぜひ多くの人に読んでもらいたい名著だと思う。
本は大きく3つの章に分かれる。
1つ目は「事件はなぜ起きたか」ということ。そして2つ目は「総力戦研究所とは何だったのか?」、最後は資料的にも重要な意味を持つ「最新研究と資料から見る総力戦研究所」。この3つ。
1つ目の章は、何せ自分もリアルで裁判や記者会見などにも参列しているから非常に興味深く読んだ。そして同時に、実際にその場に参加しているにも関わらず、知らないこともたくさんあって、びっくりもした。
それに強調しておくが、ここに書いてある飯村さんを襲ったこの事件は、誰の身に起こってもおかしくないことでもある。個人が「表現の自由」をかざす巨大メディアを相手に戦う。そのプロセスや大変さが、とてもリアルに書かれている。
でも、本当にびっくりしたのは、私が傍らで見ている限り、飯村さんは最初からものすごい鉄壁のチームを組まれているようにしか見えなかったから。でも、元フランス大使とはいえ、一人の個人が巨大メディアを相手にすることの難しさ。
実際、本当に手探りで問題に取り組み始めた飯村さん。それでも少しずつ味方が増えていく件りは、本当に圧巻だ。
飯村さんの頼れる参謀(笑)、いつもニコニコと現場が暗くならないようにポジティブに頑張るパワフルな福澤さん。そして、例えばTwitterでも有名なDark side of NHKさんをはじめとするNHKのOBの方々など、次々と飯村さんを応援する人が現れる。
あと、上のニュース映像にもなっている霞ヶ関A1番出口の秘話(というほどでもないけど)なども、とてもリアルだった。普段(軽くではあるが)杖をついて歩いてらっしゃる飯村さんが、両手でお祖父様の写真を掲げていらっしゃる様子は、本当に辛い。
しかし、一方で当日は歩き出したとたん、降っていた雨もピタッと止んだのだという。そして飯村さんたち5人は傘をさす必要がなかったのだという。このへんもグッとくる。だって普段、杖を使用している方が、写真を持ち、かつ傘を刺すなんて、短距離だって大変だ。
そして、私もそう! そう、思ったよ!!と膝を叩いた部分は、裁判長さんのくだり。私もこの裁判長さん、最初に見た時から、すごくいいと思ったのよ! 前に見学した裁判の裁判長はこんな感じだったので、とても対照的に思った。うむ、やっぱりなんでも見学しておくものだな…。
そしてNHK側に文春などでもお馴染みのあの著名弁護士が座ったのには、思わず色めき立ってしまった(ちょっとミーハー・笑)。一方、飯村さんの弁護士チームは著書『報道被害』でも知られている梓沢和幸弁護士を中心に結成された鉄壁のチームだ。
本にも書かれていることだけど、梓沢さんがあのドキュメンタリーの所長役のセリフを忠実に読み上げたところは、私も聞いていたので、すごいなぁ、と(不謹慎かもだけど)ものすごく感激した。そうか、裁判ってこうやって戦うんだ。
実際、あの時、傍聴席にいた全員が(被告側も含め)「こりゃ、ひどい」と実感したのではないかしら。
しかし繰り返すけど、この本を読まなければ、知らなかったことはあまりに多い。
例えばNHKがこういうふうに何か揉めたときの対応マニュアルにも、唖然。「相手の話を真摯に聞く」…などは良しとして、結論は「平行線に持ち込む」のが合格ラインなんだって!
ちょっとあり得ないでしょう。でも確かに巨大な会社ではありうるかもしれない。
確かにNHKみたいな巨大組織。平行線というか持久戦になったら個人など戦えるわけもない。そうやってのらりくらり、誠意のない態度を取り続ける。だから、飯村さんはついに裁判に持ち込むことになったのである。
その手前にあったBPOも、実は対NHKとなると全然フェアじゃない。BPOの事務所や事務局長はNHKの息がかかっている、ということも初めて知ったよ。(ちなみに審議の方には当然ながら放送関係者は入れないことにはなっている。あくまで「事務局長」と「事務所」ね)
しかし番組が放送されるまでは「忠実に再現」とか宣伝を煽っておいて、今はフィクションです、と主張する。いったいこれはどういうことか。
ちなみにこの本を飯村さんが書き終えてから、しばし時間が経っているので、今、現在、状況は少し変わってきている。先月末、映画『開戦前夜』はしれっと公開になった。飯村さんの気持ちを思うと本当に心が痛くなる。
話を本に戻すとして、3章については、確かに私にとっては難しかった。でも2章などは、当時の日本の様子や、飯村さんのお祖父様のことがとてもヴィヴィドに描かれていて、ものすごく面白かった。これは昭和史に興味がある人にはたまらない内容じゃないだろうか。
本を読んでも飯村さんのお祖父様は、本当に人格者で「科学」が大事だということ。そして「軍人は政治の外に立ち、政治に干渉せず」ということを常に掲げ、とてもフェアな人だったことがわかる。
フランスの軍事刊行物を2種類取ってらして、それを読むのを楽しみにしていらしたことなど、引退されても最新情報にも精通し勉強熱心でいらっしゃったこと、そんなエピソードがリアルな人物像を立ち上げてくる。
しかし、本当にひどい話だ。今回、裁判も傍聴し、私が勝手に考えてあれこれ素人ながらも想像するに、私はこの朝日新聞の田玉恵美さんのこの記事はすごく的を得ているように思ってきた。
制作費に行き詰まった監督と主演俳優(大河ドラマにも出演している)が、NHKスペシャルの制作費に飛びついた…と。簡単に言えば、そういうことだ。
ちなみに記事についたコメントプラスの松谷創一郎さんの考察も、今、当該記事から1年近く経って明らかになった事実を踏まえた上で読み返すと、さすがとしか言いようがない。
まさに「NHKが「制作・著作」の筆頭でありながら、作品内容のイニシアティヴを握れていなかった点は問題」。
松谷さん、さすが。
映画はこの番組(Nスペ)の企画が上がった時点で、かなり撮り終わっちゃっていた。そんな歴史的なチェックの甘い映画作品にNHK(しかもドラマじゃなくて「スペシャル」)は乗っかってしまった。だからこんなに歴史考察がゆるくなっちゃったんじゃないか?
この監督の作品。他の作品は実はまだ見たことがない。以前、話題になっていた『月』も興味を持ったけど、結局見る機会を逃した。
ただこんなふうに実際に起こったことからインスパイアされて作る人なのかな、とは思った。ちなみに『月』の方は原作本があったりするが、そちらも未読。あれもかなり賛否両論あった作品だと認識している。
そして、放送はとにかく終わったのだからNHK(本体)は映画には関係ありません、という態度なのも、本当に卑怯だと思う。あれの製作委員会に入ってるのは「本体」ではなく「エンプラ」です、と。
しかし昨今の邦画の桁はずれの馬鹿当たり物(「国宝」とか、アニメものとか)を見るにつけ、儲かるんだろうな、製作委員会は、と思う。本当にそういうの悔しい。
私はエンタメ業界で、一人の足で立ってきた。もちろんたくさんの人が手伝ってくれたけど、手がけたアーティストについては、全員、自分一人だったとしても頑張ったはずだ。
さてさてこの件、飯村さんを応援しているうちに、興味深いことが起き出した。まさかのまさかであるが、なんとあの「一水会」さんがこの件について応援の手を挙げることになったのだ。
確かに右とはいえ真面目な彼らにしてみたら、こんな歴史改竄はあってはならないもの。ちなみに飯村さんはご著書でも書いている通り、普段はとても「リベラル」な人だ。
私においても、日頃から左に傾いていると自覚のある自分が、まさか一水会さんのツイートをリツイするような日が来るとは思わなかった(笑)。
そういえば、これは全くの偶然なのだけど、先日聞いたポッドキャストに一水会の機関誌の編集者の方が出演していた。
そこで彼が言及していた内容もとても面白かった。『男たちの旅路』というドラマの鶴田浩二が演じた「吉岡司令補」。あの司令補に、ものすごく影響を受けて、彼は一水会に加入したのだという。
私もあのドラマ、大好きだった。76年から数年間。あのドラマは他のチャラチャラしたドラマよりもはるかにかっこよく、おもしろかった。
「真面目に考える」というのはかっこいいことだというのを教えてくれたのは、あのドラマだったかもしれない。
もしかしたら、もう右も左も関係ないのかも。
同じ「保守より」と呼ばれる中で、最近人気の辻田真佐憲さんのこちらのチャンネルも、無料部分しか拝聴できていないが、とても興味深かった。確かに2章や3章の資料部分など、この本は辻田さんには大好物ネタだと思う(笑)。
ただ映画については、人の評判を聞くと、理屈っぽくて長いセリフが多く、イマイチだという感想も多く聞いている。あくまで個人的意見です。
お金を払って見に行くのも悔しいのだが、ちゃんと批判するためにも見に行くのがいいのかな、と少し迷っている。
映画「#開戦前夜」とその元となったNスペ「昭和16年夏の敗戦」について、映画を訴えている飯村豊さんの本を読み、事情を知る方からお話も聞けて、東洋経済オンラインで書きました。映画を見た方に読んでほしいし、飯村さんの主張に触れてほしいです。https://t.co/MlYxfZqJnZ
— 境 治 MediaBorder(noteメンバーシップ)運営 (@sakaiosamu) August 5, 2026
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◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろし、公式サイトは近日中にアーカイブ化予定。自分の主催公演や招聘はもうやりませんが、2026年も若干の雇われ案件があるので、そちらはゆっくりとやっていきます。
◎よく聞かれるので、ここに載せておこう。最近観た中でベストな映画はこれ。ベストな本はこれです。
◎ノルウェーのフォルデ・フェスティバルに行ってきました。レポートを書いています。初日は1つか公演を見ていません。2日目以降のリンクは2日目・3日目・4日目・5日目。
◎そのフォルデのことを記事にしていただきました。ONTOMO Web
◎アイルランドでメアリー・ブラックのラストコンサートを見てきました。レポートはこちら。セットリストをプレイリストにしました。
◎アイルランドでポール・ブレイディの3夜連続公演を見ました。レポートはこちら。最終日の様子はここ。セットリストをプレイリストにしました。
◎ドーナル・ラニーのドキュメンタリー『In Time』。自分の感想。出てきたアーティストの紹介。Frank Harte / Zoe Conway / Méabh Ní Bheaglaioch / Seosamh Mac Grianna。また関連楽曲を集めたプレイリストを作りました。楽曲解説も書いたよ。
◎現在CDの販売は終了してますが、書籍はあいかわらず販売中。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。
◎神保町すずらん通りのパサージュにてケルト書房という棚を運営しております。ケルト関係の書籍や友人の書籍などを販売中。こちらへどうぞ。
◎最近、こんな応援記事を書きました。ぺッテリ・サリオラの来日記念盤@Intoxicate◎ケルティッククリスマス2026、発表になりました。今年はアルタンとソーラスが来日。詳細は公式サイトへ。
