映画『 #開戦前夜』を見ました

映画『開戦前夜』を見ました。悔しかったけど、ちゃんとお金払って見ましたよ。こちらの経緯があるので、私にとっては「敵陣視察」。普段なら見ないタイプの映画です。

この映画、NHKで昨年NHK特集として放送され、その内容があまりに史実とかけ離れてひどい描かれ方をしているため、遺族の方(飯村豊さん)から訴訟問題を起こされている、あれです。

だから正直、褒めるブログになるわけがないのですが、一応書いておきます。

まずは映画の冒頭にこんなメッセージが流れます。(私はメモれなかった。暗部ちゃん、ありがとう)

「架空の氏名で登場する人物は、残された資料や歴史的事実を基に創作されていて、実在の人物をモデルにしていません」

これ、なんか日本語変じゃないですか? これによれば映画は歴史的事実を元に制作したと。でも実在の人物はモデルにしていないと。んん???

飯村さんがご著書で話されていたとおり、架空の氏名で登場する人物=板倉(「い」と「ら」が一致にしているところが妙にトリッキーで嫌な気分にさせる)は、歴史的事実を基に作られているということで、つまりは実在の所長を基にしている? でもモデルにはしてません、ってこと??

で、そのキャラクターが、とにかくパワハラ。気に入らない部下をすぐ最前線送りにするなど、とにかくひどい人物として描かれています。

映画を見ていると、どう考えても、研究所で一番いばっているのは、この板倉なんで、どう考えても所長(つまり飯村豊さんのおじいさま)に直結するわけですが、本当は、たいへんな人格者で、フェアで科学的で、決して感情に流されない論理的でリベラルなお祖父様だったのに、この描かれ方はひどい。

実際猪瀬直樹が書いたこの映画の原作本では、所員のいろんな会話ややりとりがが本当にチャーミングで、人間味があって、素敵なお祖父様だったのに、だ。(体操をいやがる所員たちとの駆け引きとか最高)

でも、ここではその気持ちをいったん棚の上にあげて(あげちゃいけないんだけど)映画の感想を書くと…

まずはシンプルに「セリフが多い」と思った。あとみんな芝居が大きくて、なんかいっつも怒鳴っているし、映画じゃなくて、舞台かと思っちゃった。

セリフが理屈っぽく、必死で追いかけようとしても、そもそも内容がかなり難しい。最初の総力戦研究所シーンでウトウトしちゃいましたが、いけない、いけない。ちゃんと見なくちゃ。批判するなら、ちゃんとお金を払って入場して(敬老料金だけど)、ちゃんと見る。

ただ、俳優陣はみんな名優さんたちであるとは思った。

主人公の池松さん。宮沢りえ主演の『紙の月』という映画。私はかなり好きだったんですが、あの映画の最大のハイライトは最後の女優対決(宮沢りえ vs 小林聡美)だった。池松さんの演技は、正直よくわからなかった記憶あり。

でも今や、大河俳優さんなんですよね。知らなかった!(すみません、わたし、大河を最後に見たのは「黄金の日々」だったかもしれません)

話を映画に戻すと、特に印象に残った記者をしているという仲野太賀さんという俳優さん。彼もとてもよかった。…と、思ったら、彼も大河俳優なのかい!?

なるほど、これではNHKは彼らのオファーを断れなかったってのはあるんだろうな…と想像できます。想像です、あくまで想像。

そして。池松さんの演じる架空内閣の総理。彼の通常の仕事場でのボスが、別所哲也さん。時々J-waveでお世話になるのだけど、これまた全然気づかなかった!! 俳優さんって、すごいね。別の人物になりきるってのが、俳優さんなんだろうか。

っていうか、江口洋介さんとか? 昔のチャラチャラした役しかしてなかった頃とは、全然違います。すごいよね。

あと好きだったのは昭和天皇! 松田龍平さん、素晴らしい。セリフほとんどないのに妙な説得力があります。

そして悪役100%の、嫌な板倉所長も迫力の演技なんですよ、困ったことに。本当に悔しいけど。そしてその太鼓持ち役であるのが、私の大好きな『弟の夫』(NHKドラマ)の主演の弥一くん(佐藤隆太さん)ではないですかー おいおいおい…複雑な気分。

なんか私、映画とかいって、俳優ではなく「作品ベース」でファンになるので、1個自分の中に大ヒットがあると、もう俳優さんには他の役は演じてもらいたくない、とか思っちゃう。

でも、弥一くんはこの登場人物の複雑さをよく演じているし、最後は若者側(と、安直に呼ばせてもらう)についちゃったりして、極悪板倉所長に戦地送りにされちゃう。

話としてもこの件りは、安直すぎると思うんだけど、うーん。これはどうなんだろ。

そしてパンフレットに「所長」と出てこないのが、飯村さんのクレームを回避しようとした製作側の精一杯の言い訳だったのか…と疑いたくもなる。

だって研究所で一番偉そうにしているんだから、これは紛れもなく所長だと映画を見ている人は思うだろう。

あと!! 東條の描き方は、これでいいのかな…と思った。いや、ほんと、これでいいのか?? 歴史詳しくない、私だけど。

加えて、最後はなんだか熱狂していた大衆に責任があるようなシーンも挿入される。ま、それも戦争に突入してしまった理由のひとつではあるだろう。あるだろうけど…そこで、そっちへひっぱるのかい?! 

正直、こういう映画は一点の曇りもなく作るのは難しいのかもしれない。それでも… まずは誠意を尽くすべきだよね。だって遺族がまだリアルに生きているんだよ? 誰だったか言ってたよなぁ。なぜ司馬遼太郎は、自分が経験した昭和を書かなかったのか、って。

歴史を書くなら、歴史に対して謙虚であるのが、まずは必須だろう。

映画館、私が見に行った回は、午後遅めの上映時間で、200名ほどのホールに4、50人程度は入っていたと思う。平日の真昼間だったので、これは私が普段見ている映画に比べたら、動員はあるように感じました。が、実際、どうなんでしょうか。ヒットしてるのかな。これ。

この一連の流れから学べることはなんだろうとも思うんだけど、結局社会人たるもの(俳優たるもの)、自分が関わっている案件(映画)が、どういうものなのか、もう少しよく考えろって、ことなのかもしれない。

一緒に仕事をする相手は本当に選んだ方がいいということなんだなと思う。

池松さんにおいては、ずっと監督と一緒に二人三脚でこの作品の完成に向けて頑張っていらしたのだろう。「俳優は待ってるだけじゃいけない、作る方にまわるべき」というのは、小林聡美さんのエッセイを読んで思った私の持論だった。

だから自分で能動的に行動する俳優さんや、制作の責任を持つ俳優さんを尊敬してきた。ここでも、池松さんたちを応援したい気持ちもあるのだけれど、本当に残念だ。

組んだ相手が軽率だった、ということなんだろうか。

そして繰り返すけど、製作委員会。予算のリスク分散なのはともかく責任も分散なのか、これ? 飯村さんの裁判、何度か傍聴したけど、あそこにゾロゾロと団体でやってきて、ボソボソしてて、はっきりしない人たち。

単に映画を面白くするために、あぁいう構図が必要だったのか? っていうか、それって、そもそも映画を見る人をなめてないか? NHK特集の視聴者、なめてないか?

映画見ても、研究所の若くて優秀な所員たちがまとまるのに、あんなひどい所長の存在は必要なかったと思うよ。

あぁいう敵=悪役いなくても若者はみんな誠意を持って職務にあたり、ちゃんと団結してひとつの理知的な結論を導き出せたんだし、そして、それがあの原作本の肝だったんじゃないのか。若い頃の熱血猪瀬(今は維新クオリティだけど)が描きたかったことは、そんなことだったのか? 

本当に分からない。

ポリタスで辻田さんが的確な指摘をしていた。「こんなんだったら架空の人物:空気太郎みたいなのを作って、時々研究所にやってきて、バンバン机たたくみたいなのを作れば良かった」

「東條や近衛など実名で出てきて、そこは歴史学者の考証がついて異様に史実よりなんです。だから非常に組み合わせが悪いんですよね」

津田さんも「NHKがからんできて(N特で)ドキュメンタリーみたいに扱い、なのに監督が折れなかったってのが、もう、それはないんじゃない?って感じがしました」

1週間は無料で見れるので、ぜひ。そのあとはメンバー登録すれば、いつでも見れます。55分くらいのところで、その会話が出てきます。


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